　ふいにデコ電という言葉を思い出した三田（みつだ）は缶缶をデコる手をとめた。

「待てよ……もしやデコるって、古い？」

　自分で口にして、ぎくりとする。

　考えてみれば、最近人気のギャルタレントはシンプルなものを好んでいなかったか。

　パパとして格好のつかないところはこれまでにも見せてきたが、ダサいパパの烙印だけは押されたくないものだ。

　デコ電はギャルなる者たちの専売特許ではない。だからギャルを参考にしてもしかたない。わかっている、わかっているけれども妄想のできる男はひと味違っていた。

「デコるとかwww」

「あは、逆にエモいんじゃね？」

　繰り返される情なき声、こだます。逆に（・・）という気休めがむしろ痛いくらい。くっ、妄想なのに！

　しかし三田の辞書に後戻りという言葉はない。額といっしょである。

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