①第四節 年明け、そして高校卒業式
二〇二一年十二月三十一日、大晦日。
私は、NHKの紅白歌合戦をテレビで見ながら、
先日の自殺未遂のことは一切話題に出てこなかった。
ただ、普通に世間話をしていた。
秒針が十二を指し、二〇二二年になった。
会話は「あけましておめでとう!」で始まった。
その後は、私の謝罪と感謝で事が続いた。
「あのときは、ごめんなさい。助けてくれて、ありがとう。」
二人の返答は同じものだった。
「そんなの気にしないの!今年もよろしくね!」
こんな優しい二人と私は一緒に居て良いのだろうか。
私の頭の中は、迷いが
「怖い」
それが最後に至った考えだ。
その日はそのまま忘れるように寝た。
一月一日早朝、小学校から繋がりのある
私は、人生で初めて絵馬に願いを書いた。
『新型コロナウイルスの後遺症の症状が
この時の私は、後遺症と共存していくことを決めていた。
治す方法はなく、薬物療法による
そうなれば、選択肢は『共存』か『自死』だ。
私は助けてもらった身だ。いわば、命を一度落としている。
だからこそ、『共存』の道を選んだ。
そして、もうひとつ私の中にはある思いが芽生えていた。
考えてみればこの頃からだろうか、この小説を書こうと思ったのは。
ニュースやブログを見て、私と似たような状態、なかには歩行困難・
「新型コロナウイルスとワクチンの後遺症をもっと知ってほしい。後遺症と
その思いと同時に「ワクチンを接種してよかった」とも思えるようになった。
このような経験は、誰もができることではないと思ったからだ。
経験しているからこそ、伝えれらることがある。
「私は特別な経験をしているんだ。」
伝えることが使命だと、心の奥底で密かに決意し、私自身に言い聞かせることにした。
その願いや決意も込め、絵馬を神社へ
一月四日、
本当は
三人で話をしながら参道を歩き、行列ができているのを見ると、「少ししんどい」と一瞬思ったが、会話をしていると、しんどい感覚は自然となくなっていった。
『二人が幸せになりますように。』
その二人は誰なのか、説明は不要だろう。
正月にお祈りをしたときと内容は違うが、何個願いを持っても良いだろうと、個人的には思っている。
そのまま、体調が良くないのと共に、月日は流れていった。
二月十六日、高校の卒業式。
正直、私は体調不良で出席できないと思っていた。
この日も体調は良くなかった。
でも、この日は奇跡的に出席ができた。
感染拡大防止のため、教室での卒業証書授与となったが、私は出席できたことが嬉しかった。
最後のホームルームが終わり、真っ先に向かったのは、
二人と写真を撮りたかった。
一番お世話になった二人と一緒に。
私はもう一度二人に「ありがとう。」と伝えた。
二人は当然のように「いやいや、何もやってないよ。こちらこそ、ありがとうね。」と言った。
私は心の中で「何もやってないよ」と思ったが、伏せることにした。
この子たちからすれば、当たり前のことなのだと。そのことを理解していたからだ。
「また三人で話そうね!」という言葉で、高校での三人の短く、長い時間はいったん終わった。
その後は、担任や教科担当の先生と多く話をした。
この半年、話せなかった時間を埋めるかのように。
「本当に出席できてよかったね。」
「無理だけはしたらダメだよ!」
様々な言葉をいただいた。
私は、「幸せだな」と聞いていてずっと思っていた。
見えるものが変われば、これだけ変わるのかと。
涙目になりながら、バスに乗り、帰路に着いた。
高校生活は、後味の悪い結果となってしまった。
ただ、底を知った分、幸せを感じた部分も多かった。
一番は、「助けてくれる友達が居る」という安心感だ。
新型コロナウイルスのワクチンを接種し、一時は歩行困難や声が出ないほどの、重症と言ってもいいような状態から、よくここまで回復できたものだ。
ただ、一人ではここまで回復できなかっただろう。
全ては昨年の十二月二十一日に変わった。
あのとき、二人にメッセージを送っていなければ……。
あのとき、二人が助けに来てくれてなければ……。
二人と出会ってなければ……。
二人に支えてもらえてなければ……。
高校三年生の半分は、二人と共に歩んだと言っても過言ではないだろう。
歩幅を合わせ、手を取り、共に歩んでくれた。
文句ひとつなく、迷惑だとも言わず。
今までの人生では考えられないものだった。
心の中で
ただ、幸せが打ち勝った。
感謝しかなかった。
高校生活、最後は良いものではなかったが、二人と出会えて、良いものへ変われたとそう思えたのだった。
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