第一章 新型コロナウイルス
①第一節 ワクチンが及ぼした影響
二〇二一年九月上旬、高校三年生だった私は、十月にある文化祭に向けて、クラスで発表予定だったダンスの練習をしていた。
新型コロナウイルスが世界で
当時の安倍晋三首相や日本政府は、モデルナ製・ファイザー製のワクチン接種を
私たちも例外ではない、ワクチン接種の権利がある。
「副反応が起きるのではないのか」と、接種には抵抗があった。
私の将来の夢は「社会科教師」だった。教員免許が取得できる国公立大学への進学を目指していた。
周囲の反対もあったが、父親の後押しもあり、私の意思は
私は、社会科以外の学力が平均くらいだったため、総合型選抜ではなく、翌年の一般選抜で受験しようと考えていた。
受験などを
一回目のワクチン接種後、
異変に気づきはじめたのは、接種三日後だった。副反応は残っていたものの、体温36.5度と平熱だったため、当日は普段通り高校へ行った。
接種前と同じように、クラス全員で文化祭のダンスの練習をしていたとき、
仲が良かった友達から「顔赤くない?一回保健室行ったほうがいいよ。」と言われた。
「熱なんかないだろ」
そう思いながら保健室へ行った。
測り終え、体温計の数字を見た。
すると、朝見た36.5度だった体温は、37.8度まで上がっていた。
「マジかよ……」
私は、熱はないと思っていたのもあり、ものすごく驚いた。
担任の先生や保健室の先生から「帰ろっか」と言われ、その日は早退した。
翌日、熱は下がり「今度は大丈夫だろう」と、昨日と同じように軽い気持ちで高校へ行ったが、また熱が38度近くまで上がり、早退した。
その日から体温は常時37.5度、
さすがにおかしいと思ったので、かかりつけ医のもとへ行き、精密検査を受けた。
検査結果は、異常なし。PCRなどの検査も陰性。数値上は健康体そのものだった。
「二回目接種しても問題ないでしょう」
かかりつけ医から言われたので、二回目のワクチン接種を受けることにした。
二回目接種後、副反応は地獄感を増していた。
このような状態で高校へ行けるわけもなく、私は不登校になった。
約二週間後には手足の
再度、精密検査を受けたが、前回と結果は変わらなかった。
私は、原因が分からない『出口の見えない暗闇の道』を歩いていった。
十月上旬の文化祭には、友達に肩を借りながらではあるが、かろうじて行くことができた。
気がつけば、二回目のワクチン接種日から、一ヶ月が経っていた。
文化祭が終わり、十月中旬の進路締切日まであと少しとなった。
前からあった
私は、このまま国公立大学を受験するか、系列大学への進学か、選択が迫られていた。
体調面を考慮すれば、
しかし、国公立大学に受験合格し、進学すれば、社会科という専門分野を詳しく学ぶことができるという利点があった。
私は締切ギリギリまで悩んだ。両親や担任の先生とも、体調が少し良い日には何度も話し合った。
悩んだ末、系列大学への進学を選んだ。
仮に国公立大学の受験を選択したとして、もし体調が悪化した場合、受験ができない可能性がある。そのことを
十月末、母親からある提案を受けた。
「精神科か心療内科、受診してみたら?」
私は聞いたとき「精神科……。俺、精神病なの?」と聞き返した。
当時の私にとって精神病は無縁の病気だと思っていた。
しかも、最近嫌な出来事やストレスのかかるようなことは、体調面を除けば、一切なかった。
「精神病ではない」と思いながらも、原因は少しでも分かっていた方がいいと考え、一度近所の精神科を受診することにした。
初めての精神科病院。
診察室はまるで
「本当にこの部屋で診察するのか?」という疑問しかなかった。
診察は、普通の病院とあまり変わらなかった。
診察前に書いた問診票を医師が見ながら、質問をする。
私は声が出なかったため、紙に書くか、母親が質問に答えた。
回答を聞いた上で、医師が出した診断結果は、『新型コロナウイルスのワクチン後遺症及び、
私の頭の中は「???」しかなかった。
新型コロナウイルスのワクチン後遺症は分かるのだが、精神病=うつ病と思っていた私にとって、「
診断は受けたが、私の場合は、ワクチン後遺症は、精神安定剤や頭痛薬などを服用して様子を見るしかなかった。
『新型コロナウイルスのワクチン後遺症』という原因は分かったが、治す方法がないという現実に、私は目の前が真っ暗になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます