第13話

 ここは、なんだ。どこだ。

 そもそもこれは現実なのか?夢なのか?

 暗い、のか?何も見えない。

 異能力・超能力者がいる世界だったら考えたものはあるが、地毛と目の色に統一性がないだけで至って普通の世界だ。魔力も妖力もない。強いて言うなら霊力か。


 ごめんなさい、もうしません。

 言うこと聞くから、もうやめて…。

 ごめんなさい、ごめんなさい…。

 追い出さないで、お父さんっ…!

 お母さんもごめんなさい。

 ちゃんとするから痛くしないでっ…!


 これは、昔の…?

「うっ…」

 頭が痛い。強い力で叩かれたみたいな。ハンマーで殴られた、とでもいうのかな。実際にハンマーで殴られたことがないからわかんないんだけどさ。

「はぁ、はっ、はぁはっ…けほっ…」

 たすけて、誰か…たすけて。苦しい、痛い、怖い…。き…いや、いい。これは僕のカルマだ。背負っていかなきゃいけない己の行い。他人に助力を乞うなど許されない。

 夢なのかなんなのかは知らない。ただ、現実ではないものだ。


「ねぇ、お母さん嘘はつかないでって言ったよね?なんで嘘ついたの?」

(なんでって、本当のことを言っても嘘だって怒るじゃん)

「終わったって言ってたよね?終わってないじゃん」

(終わったって言わないと怒るから)

「信用なくしたいの?ねぇ」

(勝手に信じて勝手にガッカリしてるのはそっちだよ)

「そうやって誰からも信じてもらえない選択を自分でしてくんだね」

(それがなに?)

「ママに信じてもらいたくなんてない!」

「じゃあ、ひなのは誰からも信じてもらえなくていいんだー」

(そんなことっ…!)

「ひなののこと、信じなくていいんだね。だってそうでしょ?ママを信じない人のこと、ママだって信じたくないもん」


「…ちゃん、おねえちゃん、ひなお姉ちゃん!」

 気づいたら大きな声で呼ばれていた。

「千音ちゃん…」

「お姉ちゃんどうしたの?ぼーっとしてたけど」

 そっか、「ぼーっと」してたのか。闇の中じゃなくて、ちゃんと光の世界にいたんだ。

「ん〜大丈夫だよ?」

「明後日から学校始まるんだから超特急で宿題やんなきゃだよね!」

「え、ひな終わってんだけど…?」

「え〜!お姉ちゃん手伝って〜!」

「自分でやりなさい」

「けちー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る