第9話

 冬休みが始まった。朝は八時半に起きて夜一時半になるような生活。朝ごはんは食べてない。用意されてないから、というのが一番の理由だが、食べる気が起きないのもまた事実。といっても、己の食欲に関係なく、口が食べ物を欲してるので小さな菓子を三つ四つ食べる。

「あ、おはよう。お姉ちゃん」

「んぁ〜…おはよぉ、千音ゆきねちゃん」

 洗濯物を干している妹に軽く挨拶して、自分も風呂の栓を抜く。抜けるまでの間に掃除機をかける。風呂掃除終わったら食器洗い〜っと。あれ?

「千音ちゃん?食器って…」

「あ〜。お姉ちゃん起きてこないからやっちゃった」

「あざーす」

 ふぁ〜あ、とあくびをして鮮明に見える右目を擦る。

「お姉ちゃん、今日出かける?」

「ん〜?ひよりに行くくらい?」

 ひより、というのは僕らが通ってる塾の名前だ。

「お〜ん」

 もう一度あくびをして、こほこほと咳が出た。



 冬休みの宿題は多いとも少ないとも決して言えない量だった。適量とは言いたくない。頑張らなくても終わるが、だらけて徹夜で片付けられる量ではない。午前中は宿題に費やし、午後は予定を入れなかった。塾に通うのは決定事項なので、予定という特別な予定ではない。

「お姉ちゃん、そこの本とって〜」

「自分で取りなよ…はい」

 しぶしぶ、箱ティッシュの上に置かれた文庫本を渡す。僕は国語の冊子、千音ちゃんは読書感想文に手をつけていた。お互い、自分の部屋はあるものの、自室にいたら勉強にならん!とリビングに出てきたのだ。横に長いテーブルで対角線に座る。次々とページをめくる千音ちゃんを可愛い可愛いと眺めながら問題を解く。十問程度のものが見開き二十ページほど。一日で片付けられな…くもない。けどだるいので、明日と今日で分けようと思います。

 冊子の半分を片づけて、一時半という少し遅いお昼ご飯を食べる。冷蔵庫からタッパーを取り出して電子レンジで一分。その間もシュミレーションゲームを動かす。この後の予定は塾に行く以外ない。それも四時半までは暇だ。さて、三時間ほど何をしようか。支部で体調不良の二次創作でも読んで、ゲームしてたら三時間などあっという間に溶けるだろう。あ、塾で続き終わらせてもいいな。さて、行ってきますか。

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