第6話

 今日も放課後は休憩室で過ごす。

「よっ、絢瀬」

 聞き慣れたその声と「おい〜す」ともうひとり。

「梅小路か、珍しいな」

「まーなー!……昔みたいに『はじめちゃん』って呼べないんだよな…」

 淋しそうだな。清嗣も同じなのかな。

「まぁ、うん。今日くらいは許されたいけどね?何処で誰が聞いてるかわからんし…」

「梅小路、言うな」

 清嗣なりの気遣いか。もしくは、抑えているのか。昔みたいに『きよくん』と呼ばれたい、呼び方さえも変えたくないって思いを。

 少し重くなった空気を飛ばしたのは肇だった。

「今日、俺補習なんだけどさぁ、センコーのやつ、他の生徒も見なきゃなんねぇみてぇで帰んの遅くなんだよなぁ…だから来た」

 この年末に補習とは何をやらかしたんだ、肇…?

「絢瀬のことすんげぇ心配してたくせに」

「余計なこと言うんじゃねぇ…」

 この二人には大事にされてるなぁと実感する。たとえ、その他全人類が敵に回っても大丈夫。三人でいられるなら僕は幸せだから。

「ありがと」

「無理すんなとは言わねぇけど、倒れるまでやりすぎねぇでくれよ?学校や近所ならまだいい。知人がいねぇとこで倒れて死なれたら俺はどうしようもねぇからさ」

 それはそうだな、と清嗣が乗っかる。

「キツいなら頼ってくれ。頼れないなら呼んでくれ。声が出せないことがあるなら笛か何か肌身離さず持っていてくれ」

 あまりの勢いに圧倒されて言葉が見つからない。

「…過保護か?笛持ってないし」

「にもなるわ。オメー、気づいたらいなくなってそうで怖ぇもん」

 やっと出た言葉に肯定が返ってきた。

「近いうちに買いに行く」

「え、ガチ…?」

 ガチだろうな。本気だろうな。こういうときに冗談を言うやつじゃないもんな、きみたちは。

「もちろん」

「き…っ…九条、梅小路、ありがとな。こんな僕を大事にしてくれて」

「おうよ」

「ん。こんな、じゃないが」

「ところで梅小路、そろそろ行ったほうがいいんじゃ?」

「そうだな!そういえば!!」

「うん、行ってくるといいね!俺たちは最終下校まで残ってるから終わったらまたここに来るといいね!」

「おい〜す。行ってきま〜す!」

 なんだろう。このハイテンション。昔からあるとは言え、毎回新鮮な。二面性というのか、なんというのか。たまにくる清嗣の落ち着き感ゼロのモード。だからおもしろいんだけど、こいつらは。

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