第5話
二時間目が終わったと海咲ちゃんに起こされた。これ以上は保健室で休めない。帰るか授業に出るか、だ。確か、三時間目は国語だったような…。正直、まだ頭いたい。でも許容範囲。何より、帰れない理由がある。何がなんでも此処に留まらなくては。
「出ます。国語好きだし」
「無理しないでね?はい、体温計」
受け取ったそれを脇に挟む。六・七度。許容範囲だろう。表示されたまま海咲ちゃんに見せる。次の教科担任に渡す紙を受け取って、通学鞄を肩にかけ、保健室を出た。
「あ、絢瀬」
その呼び方か。ならばあわせよう。
「九条か」
ドアを開けたら九条と梅小路がいた。心配して見にきたんだろう。
「どうだ、調子は?」
「問題ない」
なくはない。けど、許容範囲だ。返答は間違っていないと思いたい。
「そっか、無理せんでな」
「ん」
それぞれ教室に入る。クラスメイトは普段どおりだ。僕は空気に等しい。ただ一人を除いては。
「ひなのちゃん!」
「
今年度の隣人、小牧鞠凪。クラス替えがないうちの学校で、幸運なことに無害な子が隣になった。無害どころか、不器用だけど優しい子。
「えっと、大丈夫だった?…ごめんね、こういうことしか言えなくて」
保健室上がりの人に大丈夫か、と訊くのは愚問ということだろうか。それを気にしてる人なんてあんまりいないと思うけどな。
「ううん、もう大丈夫だから。ありがとね」
机に鞄をかけてロッカーから国語の教材を取る。障害物を避けるようにグループを避けて席に戻る。先生のヒールの音がだんだんと大きくなってきた。
「じゃあ、みんな席について〜鳴るよ〜」
そうして二回、お昼を挟んでもう二回、黒板の文字をノートに写す作業を繰り返して帰りのHRを迎えた。
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