第2話
今日は朝から体調が悪かった。起き上がった瞬間、酷い頭痛がして布団に崩れた。昨晩咳き込んだせいで睡眠時間がいつもより押していたはずなのに、起床予定時刻よりも一時間早く起きてしまった。なんとか寝るよう頑張ったものの、寝なくては、と思えば思うほど眠れず、寒さのせいで咳き込んで二度寝が叶うことはなかった。まだ二十四時間暖房をつける時期じゃないと朝晩しかつけていないが、ついているはずなのに寒い。早く陽が昇るか、いまより暖かいところに行きたい。夏は陽射しが強くて指一本すら動かせないとか言っていたのにな…。
母の「朝ごはんできたよ〜起きといで〜」の声を合図に立ち上がる。と、くらっとして視界がぼやけた。一歩二歩下がって体勢を整える。いつからこんなに言うことを聞かない身体になったんだっけ。
「おはよぉさん」
「おはよー」
母に朝の挨拶をしてテーブルに置いてある朝ごはんを食べる。母は洗濯物を干している最中だった。今日も昨日と変わらないメニュー。そしてきっと明日も変わらない。それが良い。咳で体力が奪われている上に、寝不足で頭痛と吐き気がする。まだなんとか、食べ物を受けつけてくれるようだ。それからは本当に頑張って制服を着て、鞄とお弁当を持って家を出た。基本的に空いているバスではあるものの、雪道であることと通勤通学の時間であることが重なり、座ることはできなかった。いや、正確には座れるんだけど、誰かの隣に座ろうとは思えないから座れる場所がない。夏なら座れたのに。少しの間だけでも忘れられた体調の悪さを思い出す。満員とは言えないが、そこそこ人で埋まった車内で吐くわけにも倒れるわけにもいかず、せめてここじゃないところで、の思いだけで耐え抜いた。夏ならにおいでもっと悪化していただろう。最寄りのバス停のアナウンスが聞こえた。
「次は清陵高校です。お降りの方は押しボタンでお知らせ願います…」
もうすぐ解放される。そう安堵して緊張が解けたせいか、また一段と悪くなった。立っていられそうにない。苦しい。きっと過呼吸起こしかけてるな…などと考えて吐き気から気を逸らそうとしても現実は甘くなかった。強めの立ち眩みも来て、もういっそのこと倒れてしまいたくなった。倒れなくてもしゃがみたい。でもそんなことしたらちょっとした騒ぎになりそうで。同じ高校の生徒もいる中、噂にもなりたくないし。長いような、でも現実的にはきっと短い時間の後、バスが停まった。同じ制服を着た人が次々と降りていく。僕もその人波に呑まれるように降りる。乗った時は空いていたのにこんなに混んでいたのか…。雪道は流石だな、と感心していると聞き慣れた声が聞こえた。
「おい、ひな」
「ぇっ…?」
驚くほど声が出なかった。これでは気づかれる。というか、すでに気づかれている。
「オメー、無理すんなよ。ぶっ倒れるぞ」
「きよ…」
いつ追いついたのだろう。バスには一緒に乗らなかったのに。それにしても情けない声だ。
「愚問かもしれねぇが、大丈夫か?とりま学校まで持ちそう?」
「ん…なんとか」
「そうか、もうちょい頑張れよ」
ほんとうはキツい。けど意地ってものがある。清嗣についてもらいながら校門まで着いた。
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