20.I3-3

 水谷とのやり取りの前、早海さんと訓練をする更に前、俺は宇佐さんの部屋を訪ねていた。


 この時、すでに月村次長を殺したのは水谷であると考えていたが、前回のミッションでの宇佐さんの発言が気になっていたからだ。


 直接、聞くというのは、正直、かなり悩んだが、他の方法が思いつかなかった。


「どうぞ……」


 メッセージでアポは取っていたが、宇佐さんはあっさりと俺を部屋に入れてくれた。


 不思議行動が目立ち、忘れがちだが、面と向き合って見ると、やはり美人だなと思う。


「……!」


 が、なんとなく不機嫌そうに膨れっ面をしているような気がした。


「なんでしょう……?」


 椅子に座ると、宇佐さんはムスッとした表情で俺に問いかける。


 怯みそうになるが、俺は、ここに来た目的を果たすことにする。


「配慮に欠ける質問かもしれないけど、宇佐さん、ミッション2の時にも誰かを……その……撃ってしまったんですか……?」


「…………はい」


 宇佐さんは俺に視線を合わせずにそう答え、そして続けた。


「キメラに拡散レーザーを使用しました。言い訳になるかもしれませんが、私は人に向けて、撃ったつもりはありません。私の不注意だったのか、その人が運悪く飛び込んできてしまったのか、それとも自殺だったのか。今となってはわかりません。ですが、結果的に、一人の方を私のレーザーにより死亡させました」


「……そうだったんですね。ちなみに、そのことを別の人は知っているんですか?」


「……? ミッション2のチームの人は全員知っていると思いますが……」


「……」


 水谷は、やはり何かを偽装しようとしたのだろうかと思う。


「そっか…… 教えてくれて有難うございます…… 宇佐さんは大丈夫?」


「大丈夫です……」


「そっか……」


 顔には出さないが、きっと無理をしているのだろうと気の毒に思った。

 しかし、それも宇佐さんの次の発言を聞くまでであった。


「……私はひょっとすると……頭のネジがぶっ飛んでいるのかもしれません」


「へっ!?」


 宇佐さんの唐突な自虐に驚き、変な声を上げてしまう。


「これはゲームです」


「……?」


「私の心は……最初のミッションの時から、何も変わっていないんです」


「え……?」


「多少、申し訳ないくらいには思っていますが……」


 それ以上のことは思っていないということか……


「むしろ平吉さんにずっと一位を取られているのがすごく悔しいんです」


 だからムスッとしているのでしょうか。


「やっぱり私……少し変ですかね……?」


「そ、そうですね……」


 ……とはいえ、これは宇佐さんなりの生き残るための防衛本能なのかもしれない。

 言ってしまえば現実逃避というわけだが、そのおかげで極度の緊張感を回避できるのなら、それに越したことはない。もう、それならいっそ、最後までそのままの方がいいだろうと思えた。


「あ…… でも、前回の……ミッション3の戦いはちょっと不思議でした」


「……?」


「私、ゲームのコントローラは、やはりジョイパッドが好みなんですよ……」


「ん……?」


「まぁ、要するに脳波コントロールは、ほとんど使っていないはずなんですが」


 根っからのゲーマーらしいと言えばそうだが、何が不思議なのだろうか。


「あの時…… キメラにチームの人が捕まった時ですが……」


 林さんの時だな……


「確かに、キメラに捕えられた人はキルした方が合理的だとは思いましたが、スキル発動のCボタンを押してはいないと思うんですけどね……」


「……?」


 どういうことだ?

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