21.I3-4

 水谷との一件の後、インターバルでは恒例となっていたミーティングへの招集メッセージが届き、会議室へと足を運ぶ、


「恐らくこれが最後のミーティングだろう」


 日比谷はいつものように険しい顔をしている。


「この会議室も随分とスペックオーバーになってしまったな……」


 日比谷の言うとおり、会議室は、空席の方が多くなっていた。


 幸い、生存者は全員参加している。水谷も白川さんも何食わぬ顔で参加していた。


「確かに人数は減ってしまったが、まだこれだけの人間が残っている。もう必要以上に何かを言うことはない。どうか次の試練をより多くの人間が乗り越えてくれることを望む」


 皆が日比谷の言葉を沈黙にて了承する。


「うむ……チームについてだが、この人数であれば、もはや分ける必要はないだろう。最後は全員で一つのチームとしたいと思う」


 俺、友沢、水谷、早海さん、宇佐さん、日比谷部長、王さん、金井崎かないざき課長、土間課長、横之内よこのうちさん、鮫上さめかみさん、そして白川さんの十二名。


 ここまで生き残ってきただけあって、生命力の強そうな個性豊かなメンバーが揃っている。


 金井崎課長、土間課長、横之内さん、鮫上さんの四人は前回の別働隊のメンバーだ。


 金井崎と土間は、水谷同様のエリートで、いわゆる最早組だ。


 俺達の世代よりも三つか四つほど上の年次になり、先輩に当る。二人とも水谷と同じく、日比谷から気に入られているようで、水谷にとっては出世のライバルであったとも言えるだろう。


 そこまで、二人について詳しいわけではないが、金井崎は頭が切れるタイプ、土間は熱血タイプといった印象だ。


「他に何か伝えておきたいことがある者はいるか?」


 日比谷が暗に会議の終わりを告げる問い掛けをする。いつもはだいたいその問い掛けに沈黙で答えるが、今日は発言を希望する者がいた。


「ちょっといいですか?」


 水谷だ。


「構わない」


 日比谷が発言を許可する。


「月村次長の件についてです」


「……何かわかったのか?」


「はい、月村次長を殺害したのは…………私です」


 ……


 水谷は告白した。母親の件は説明しなかったが、自身が生き残るために魔が差してしまったことを述べ、謝罪した。


「本当に申し訳ございませんでした……」


「……その言葉は、月村さんに言ってやるべきだったな」


 日比谷は穏やかな口調で述べる。


「はい…… また、この謝罪自体も、とある人物にこれを看過され、口封じを返り討ちにされた結果、行うに至りました……」


「……そうか……水谷を返り討ちにするとなると、人物は、随分と限られるが……」


 水谷め……言わんでいいことを……


「……あのような状況だ…… 魔が差してしまうということは、理解できる…… この件は不問と……」


「いいんですか!?」


「!?」


「本当に不問としていいのでしょうか? 部長!」


 日比谷が水谷を許そうとする旨を告げようとすることに対して、日比谷の隣りに座っていた土間が疑問を投げかける。


「部長はこの件について、犯人を絶対に許さないとまでおっしゃられていましたよね……?」


「……」


 日比谷は数秒、沈黙する。そして、ゆっくりと口を開く。


「……確かに土間の言う通りだ…… 水谷……お前には責任は果たしてもらわなければならない」


「え……?」


「水谷……お前を処刑する」


「っ!?」


 水谷は覚悟はしていただろうが、急な風向きの変化に、目を見開いて驚いている。


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