第4話 良い予感
「あのさ・・・僕も予感のようなものを感じるようになった気がするよ」
「えっ?」
放課後が終わり学校から出て両親のまだ居ない家に入って扉を閉め靴を脱いで家に上がった所でアカリは突然そんな事を言った。
「朝、電車に間に合わないって速足になったでしょ?」
「あぁ・・・」
「あの直前に予感の様なものを感じていたんだよね」
「どんな感じだった?」
「なにか少しだけ良いことが起きそうって予感がしたよ」
「それで?」
「ニケと手を繋げたよ」
それは悪い予感とは随分違う予感だな。
「他にも感じたか?」
「何度か感じたけど何が起こるか分からないから無視したよ」
「なるほど・・・」
その感じ方は俺と似ている気がするけど感じ方と結果が随分違う。
「弱く感じる時に試してみるか?」
「今も少し感じているよ」
何かかなり弱い悪い予感が僕にも纏わりつきだした。
「じゃあそれをしてみて?」
「うん」
というとアカリは僕にエイっとばかり抱き着いてきた。
「えっ?・・・ちょっ・・・」
「ただいま~あら?」
「おかえりなさい」
「お袋・・・これは・・・」
そこで少し強い悪い予感が漂ったので黙った。
「あらあらまぁまぁ! 今夜はお祝いね!」
「お母さんヤダー!」
「・・・」
「それでいつからなの?」
「うふふ・・・僕がこの家の子になった時から!」
「・・・」
「それもそうだわねっ! 今夜はお赤飯炊かなくちゃ!」
「恥ずかしいよぉ」
「・・・」
「でもあんたたちちゃんと節度ある付き合いをするのよ?」
「はーい」
「・・・」
「あとそういうのはどちらか二人の部屋でした方が良いわよ? ここだと扉が開いた時に外から見えちゃうから」
「うんっ!」
「・・・」
なんだろう・・・悪い予感がビンビンして何も言い返す事が出来ないんだが。
「お赤飯炊くのに時間がかかるから夕飯少し遅くなるわよ」
「わかった」
「・・・」
「じゃあ早く部屋に行きなさい、あと制服に皺を付けないようにね」
「はーい」
「・・・」
お袋はいそいそとキッチンに向かうとガサゴソと乾物籠のあたりを探すような音が聞こえてきた。
「いこっ?」
「あぁ・・・」
やっと声が出せたけど・・・これって。
俺の部屋にアカリと入り話をした。
「どうだった?」
「これが予感の結果か?」
「そうだと思う」
「俺達が付き合っているという既成事実をお袋に見せる事か?」
「そうだね」
「弱い予感だったんだよな?」
「そうだよ?」
なんだろう? 俺には最初は弱い悪い予感があったあと、お袋に言い訳の言葉を言おうとすると強い悪い予感が纏わりついた。
「それで今の結果はアカリが望んでいた事か?」
「そうだね」
これは多分良い予感だ・・・。
「アカリ・・・部屋に戻って制服を着替えたら戻って来てくれ」
「分かった」
アカリが俺の部屋から出たので制服を私服に着替えて準備を始めた。
外からノックがしたので「入って」と言ってアカリを招いた。
「それでどうするの?」
「このマークシート問題を解いてくれ」
「これ?」
「あぁ・・・但し問題は読むな」
「えっ?」
「予感に従って埋める感じでやってくれ」
「わかった・・・」
アカリは共通一次の数学の過去問のマークシートをただ闇雲に埋めていく作業を続けた。
その作業はすいすいとはいかず時間ギリギリになって全てが埋まって終了した。
「できたよ・・・」
「どうだった?」
「不思議な感覚だった」
「それでどんな感覚だった?」
「最初は何も感じないんだけど時間が経つと良い予感がして埋めれば良い場所が分かっていく感じだった」
「なるほど・・・じゃあ答え合わせをしてみよう」
「うん」
正答率は8割、いい成績だが決して10割ではない。
「これってどういう事?」
「俺の経験からすると頑張ればここまで届くという結果になるな」
「えっと」
「俺の場合は悪い予感のする場所を外していく感じで似たような結果が作れる」
「僕と逆だ・・・」
「まともに解けば10割当たり前のテストだと10割になる」
「分かりやすい」
「自分の実力を大きく越えた力を持つと悪い事を招いてしまうという事なんだろ思う」
「私の場合はいい結果では無くなるって事なんだね」
「多分な」
自分なりの能力の考察だけどアカリは納得したようだ。
「さっき俺に抱き着いてきた時、俺は少しだけ悪い予感がしていた」
「えっ?」
「その結果はお袋に対して恥ずかしい思いをしてしまうというものだったと想う」
「僕と付き合うのが嫌とかでは無いんだね?」
「そうだな」
やべぇ・・・悪い予感は纏わりつかなかったのでセーフだと思うがアカリの闇がチラッと垣間見えた気がしたぞ?
「アカリの良い予感を選ぶ事で、俺の悪い予感が反応する事がある事が分かった」
「うん」
「だから強い予感に従う時はお互いに相談して選ぶようにしよう」
「わかった」
ふう・・・なんとかなったようだ。
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