第150話 天球
「なんでよっ!?」
「なにが?」
「新しい力に目覚めたんだから私が勝つ場面じゃないの!?」
「いや、エレミヤ相手にそんなことできる訳ないだろ」
そもそも、エレミヤだって
「まぁ、グリモアが使えるようになったんだからこれから鍛えていけばいいさ。それでも、エレミヤに追いつこうと思ったら並大抵の努力じゃ無理だけどな」
「才能の差かしら?」
「そうだ、なんて単純に言えるかどうか……エレミヤが才能に胡坐をかいている人物かどうか、わかってると思うけど?」
「むぅ」
なんにせよ、グリモアが発動できたことは進歩だ。そこはまず喜べばいいと思う。そこから先のことは、また後で考えればいい……エリッサ姫はしっかりと前に向かって歩き出すことができたんだ。まずはそこが大切なんだ。
「ガルガリエル」
『……もしかして、俺に話しかけているのか?』
「そうよ。ただグリモアを使うだけじゃ、どれだけやってもエレミヤやテオドールには勝てない気がするから、貴方の力を貸してほしいの」
『そう言われてもなぁ……エレミヤってのは、あのミカエル様の力を持ったあの男のことだろ? テオドールってのは?』
「この男よ」
ガルガリエルと会話をしながら俺の方に指を差してきた。
『ルシファー』
「ん?」
『この男、ルシファーの力を持っていやがるのか。なら一生勝てないって、諦めな』
「ちょっと!?」
えぇ……ガルガリエルってやっぱり軽い方が本性なのか? ガブリエルも仕事には真面目だって言ってた気がするけど。
『心底気に入らないが、天族で最強は誰かって言われて名前が出てくるのはルシファーかミカエル様、後はメタトロン、サンダルフォン、アザゼルぐらいか。けど、多分ルシファーはミカエル様と同じように、最初に名前が出てくる天族だぜ? それくらいやばい奴なんだよ』
『ガルガリエル、おだてるのが上手くなったな。しかし、私がミカエルと同格のような扱いはよくない……私が、最強だ』
『そういうところだぞ』
「本当にそういうところだと思うぞ」
俺はルシファーとそこまで長い付き合いではないが、そういう性格してるから皆から嫌われているのでは? 満遍なく全員から好意的に思われていないのはある意味凄いと思うよ。
「じゃ、休憩は終わりにして早く
「わかっているわ。この国の王女として、私は必ずこの
『なぁ、国を守るって相手は誰なんだ? アザゼル?』
『クラウディウスだ』
『……勘弁してくれよ。なぁ、お嬢ちゃん、それは相手が悪くねぇかな?』
「私のグリモアなら弱気にならないで。私は王女として、絶対に退かないから!」
『がぁっー!? なんでこんな面倒な奴に転生しちまったんだ!?』
うける。
「
大小9つの光る球体がエリッサ姫の周囲に出現する。それぞれが濃密な魔力を放ちながら、よく見るとそれぞれの光の色が若干だけ違うように見える。もしかしたら、それぞれが特別な魔力でも帯びているのかもしれないな。
「付き合ってもらうわよ、テオドール!」
「いいけど……俺はエレミヤのグリモアと違って手加減ができるグリモアだから、安心してくれていいよ」
「手加減できるならしてみなさいよ!」
うーん……グリモアを発動させた時の万能感はなんとなくわかるけど、流石にはっちゃけすぎでは? ちょっとお灸を据えてやるかな。
なるほど、天球は自分の好きなように動かすことができる魔力の塊って感じなんだな。それぞれから発せられている光の違いは、恐らく温度の違いかな。一番大きな天球からはレーザーのような光が照射できるみたいだ。それ以外の能力はまだ確認していない、と言うよりエリッサ姫もまだ制御できていない感じだな。
まぁ、人間の腕がいきなり9本増えて、今まで通りに全部同時に動かせますかって言われたら無理だろうな。そう考えると、アイビーの
「うぐっ」
「限界か?」
「し、知ってたのね」
「そりゃあ、ね」
俺は自分に向かってくる
グリモアなんてものは、発動すれば勝てるってぐらい強力なものが多い代わりに、どうしても魔力を消耗してしまうような動きをする。勿論、発動するだけならばそこまで魔力を食わないことも多いが、エリッサ姫の
アイビーやヒラルダは、そこら辺を気を付けながら戦っていたりするけど、さっきグリモアを発現したばかりのエリッサ姫には無理難題だったな。
『仕方ない。俺が手伝ってやろう!』
「……ガルガリエルが手伝っても、消費するのはエリッサ姫の魔力だぞ」
『そうだった』
やっぱり、このガルガリエルって軽い感じの奴では?
『なら、少しだけ手本を見せてやるから、ちゃんと見て覚えろよお嬢ちゃん』
「誰が、お嬢ちゃんよ……エリッサ・クーリアよ」
『よし、お嬢ちゃん』
「話を聞きなさい!」
ふむ、話を聞かないところは結構似てるな。
俺が勝手に感心していたら、再びエリッサ姫の周囲に
『そらっ!』
ガルガリエルの掛け声と共に一番小さい天球が少し動いた次の瞬間には、俺は頭を動かして避けていた。それでも、髪の一部が焦げたような音がする。
『魔力ってのはむやみやたらに放つものじゃない。こうして、小さな魔力でもしっかり狙えば相手の命には届くもんなのさ』
この速さ、これが本来の
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