第148話 歩み寄ることが大切

「まず、最初に確認しておきたいんだけど、リエスターさんと一緒にクラディウスに対抗してくれるってことでいいのか?」

『肯定。終末、天族、宿敵』


 クラディウスは天族にとって戦うべき相手ってことか……確かに、サリエルやミカエルなんかも同じような感じで言っていたし、ウリエルなんかも魔族よりもクラディウスの方が優先かみたいな雰囲気だったな。そう考えると、レミエルも同じぐらいの熱量で協力してくれると考えていいだろう。


「じゃあ……一番聞きたいことなんだけど、ラグエルとラファエルがどこにいるのかわかったりしないか?」

『……不可能。双方向、交信手段皆無』

「そりゃあそうだよな……そんなのがあったら、ミカエルができない訳ないし」

『ルシファー、契約者、探索』

「わかってる」


 俺が自分から動いて探さない限り、ラグエルとラファエルは見つかりっこないってことは理解しているつもりだ。

 それにしても、レミエルは話が早くて助かるな。無駄なことを喋らないと言うか……そもそも最初から最後まで喋ってすらないと言うか。ともかく、レミエルのこの必要な情報だけ伝えてくる感じは波長が合わないと喋りづらいだろうな。


「よし、なら話しは終わりですね」

「やるのかい?」

「勿論ですよ……授業中なんですから」

「そうこなくては」


 互いに数秒で武器を駄目にしてしまうぐらいには手加減が下手くそだけど、その一瞬の立ち合いでも俺はリエスターさんから学ぶようなことがある。リエスターさんは……ただ俺と戦いたいだけだと思うけど。





「てな感じで、ちょっと会話してから普通にやってただけだから別段なにか特別なことをしていた訳じゃ……」

「むぅ」


 授業後、リエスターさんに会いに行ってレミエルと会話する予定が消えたので、俺はエリッサ姫とアッシュが力を覚醒させるための修行を眺めているつもりだ。エリッサ姫にはリエスター師団長と何を喋っていたのか、そしてなにか特別なことをしてあんな異次元の組み手をしていたのかと言われたが、別になにも特別なことはしていないとつまらない回答をしたので、ちょっと不満そうな顔をしているようだ。


「それで、私の相手はエレミヤ?」

「エリッサ姫のお相手ができるなんて光栄ですね。その魂に刻まれた美しき力を、是非とも見学させてください」

「……なんか、ムカつく」


 そう言うな……エレミヤの中にいるミカエルの力が、エリッサ姫の中にいるガルガリエルの力を目覚めさせるきっかけになるかもしれないんだから。少なくとも、力技で俺と戦うなんてことをするよりは可能性が高い。

 少し離れたところでは、アイビーとアッシュが向き合っている。あちらも、アイビーの中にいるサリエルの力を使うことで、アッシュの中にいるであろうオファニエルの力を目覚めさせるきっかけになればと用意した訳だが……なんだかアッシュは単純にアイビーと戦えることが嬉しそうだ。


「見ているだけではつまらないだろう? 私に付き合ってくれないか、テオ」

「いいけど……二人三脚は上手くできるようになったの?」

「…………多分な!」


 ダメそうですね。



 不思議だな……ウリエルとニーナの性格的な相性は絶対にいいはずなのに、何故かあの2人の息が全く合っていない。ちらりとアイビーとエレミヤに視線を向けるが、どうやら2人は内側の天族とそれなりにいい関係を築きながらしっかりと息を合わせている。


「余所見かっ!」

『はっ……くだらんな』

『なにをぉっ!?』


 逆に、俺とルシファーは結構意見が食い違うことも多いし、互いにこいつ性格悪いなと思っているんだが……別に動きの阻害になっている感じはないし、逆にルシファーは息を合わせやすい相手だと思っている。

 無理に合わせようとしているからなのか、それとも2人が張り切りすぎているのか。恐らくは後者だと思う。2人とも、戦いになると感情を抑えきれなくなるタイプのようだから。

 エレミヤとミカエル、アイビーとサリエル、ヒラルダとガブリエル、そしてリエスターさんとレミエル。多分、彼らは生まれた時から魂と共にあるから、息を合わせるのが自然にできるんだろうけど、ウリエルはその特異な力で短いスパンでの転生を繰り返している。ニーナの身体に入ってのは最近のことなので、まだ感覚が掴めていないのだろう。


「とにかく、今は個人で戦った方が強そうだな」

「……いや、それでは私は威風の劫火ウリエルを完全に使いこなすことはできないと思っている。私が生まれ持った才能ではないから、だからこそウリエルの協力が必要不可欠なんだ」

『俺も同意見だ。ニーナの身体で俺が力を発揮するには、ニーナの協力が必要……悔しい話だが、今はとにかく互いの呼吸を理解して息を合わせるしかない』


 うーん……2人の言っていることも理解できるつもりだ。実際に威風の劫火ウリエルを使用しているニーナがそう感じるのなら、そういうことなのだろう。


『……そもそも、互いに最高出力で扱うから悪いのではないか?』

「え」

『丁度いい火力というもの知らないのか? 私には、明らかに小娘の肉体がウリエルの力に悲鳴を上げているように見えるがな』


 ルシファー?


『しかし、最大火力でなければ敵を燃やすことが難しくなるのではないか?』

「それに、最大火力で使えなければ効果半減だろう。それだったらウリエルが1人で使った方が強い」

『その最大火力に遠く及ばない火力しか出せていないことをまずは理解しろ。そして、生まれたばかりの赤子が自分の足で立って歩き出すことができないように、物事には順序と言うものがあることを理解した方がいい』


 なるほど……ルシファーの言いたいことがわかった。つまり、ボロボロのゴミみたいな機体にジェット機みたいなエンジンを搭載したって空中分解するだけってことだよな。まず、少しずつ様子を見て、現状で出せる2人の最大火力を探った方がいいってことだ。その最大火力は、後からじわりと上げて行けばいいのだから。

 なんだ、たまにはすごいまともなアドバイスするじゃん、ルシファーだって。俺はそういう細かいことを考えながら魔法を使っていないので、あんまり的確なアドバイスできないんだよな……みんなからよく言われるけど、剣術は努力で身につけたけど、魔法は生来の才能だけで使ってるからな。

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