第124話

「え?あ?う?え??ど、どういう事??」

「私がご飯とお風呂用意して、みことが夜きちんと寝てるか私がみるの。そのためベッド大きくして……」

流石にみことは立ち上がって文句言おうとしたけど、足が痺れて倒れてしまった。

「痛……。あのさ、りんな。年頃の男女がそんな生活するのは……。夫婦じゃないんだから」

「うん。でもみこと栄養と睡眠が足りてないのよ。だからそれを見守るの。子作りするわけでもないから夫婦じゃないでしょ?」

すっとぼけてるのか、小悪魔なのか……。みことはりんなのことをじっと見た。でもりんなは悪意もなく、純粋にそう思ってる顔をしていた。無垢過ぎる。いくらなんでも無垢過ぎる。頭が痛くなった。ただ、昨日ご飯を食べてゆっくり眠れたのも確かなのだ。

りんなが出来ることを考えてくれたんだろう。それはよく分かった。だが男としてこれは止めなければならないのでは?とみことは決意した。

「襲われてもいいのか?」

キョトンとしているりんな。襲わないでしょ?と答える。襲う気は確かにない。でもあまりにもここまで無垢だと怖いと思った。

「オレは確かに襲わないつもりだけど。万が一万が一襲ったらどうするんだ?」

「みことは同意なしの人を襲うの?」

無垢な子供相手だった。みことは疲れてしまった。堂々巡りだろう。

「はぁ、分かった。でもベッドは同じなのは絶対にダメだ。それは駄目だ。そうだよな、オレが襲わなければいいんだよな……」

みことは負けたと思った。ここまで純粋無垢に自分を信じてくれてる女の子を襲う訳が無いし、そもそも自分はミカの事がまだ好きだ。そう考えて落ち着こうとした。

「りんな、りんなの気持ちは有難いけどこれはやっぱりよくないと思う」

「どうして?みことがご飯食べてお風呂入って夜きちんと眠れるようになったら、やめるよ?」

「どうしても辞めない?なら一つだけ約束して欲しい。こんな事するのはオレ以外は大切な人の為にするんだ。何人もやっては駄目だ。頼むから」

りんなが決めた目をしてるので諦めた。多分みことがりんなをずっと助けてきた事で、りんな自身がずっと負い目にあってるのだ。だからここで恩を返したら元に戻れる。

「うん。それじゃあ今日から私の部屋に帰ってきてね。今日のご飯何がいい?」

りんなはにこにことしていた。みことは力が抜けて笑った。

「鍋もの食べたいな。あれ美味しかった。1人で食べるものじゃないし」

「分かった。朝……今からすぐに作るの大変だから簡単なものでいい?」

みことは笑ってこくりと頷いた。りんなの恩返しを受けたら確実に自分が負い目になると思いながら。

「身支度も魔法で簡単だしな。時間はそんなに気にしなくてもいいから」

2人はままごとみたいに暮らした。みことはそんな生活にとても癒された。誰かがおかえりと言ってくれる生活はいいな、そう思って生活をしていた。

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