第119話
「はあ。疲れた。でも多槻さま私を振ったんだから口出ししないで欲しい。頑張って普通に接してるのに。わーん」
枕に八つ当たりして涙を拭いて部屋を出た。あんまり神の国は知らないと思ってふらふらと外にでた。
「うわぁ、ここはなんだろう」
雪が降ってるとおもったら暑くなったりと、不思議な場所もあった。あちこち歩いて公園を見つけてベンチに座る。
「人間の時は神の国に居るだけであんなに苦しかったのに、やっぱり凄いな」
伸びをして気持ちを緩めた。気持ちを切り替えないとと思って少し飲み物を魔法で出して飲んだ。
「はぁ、凹むなぁ。どうしよう。帰りにくい」
下を向いてたら人影があったので前を見た。目隠しの神、雅臣だった。
「どうしたんです?」
「ああ、雅臣さま。あの……いえ、喧嘩しちゃって」
りんなは慌てた。雅臣にこんな所で会うなんて。そしてこの神はみことの次に偉いはず。自分みたいに神になったばかりの真龍帝位が話していいのかとパニックになった。
「そっか。そこに座ってもいいですか?」
雅臣はりんなの横を指差し、聞いてきた。りんなは慌てて立ち上がってどうぞと言った。雅臣はにこりと口角をあげた。
「私は貴女の横に座りたいと言ったんですよ。貴女とお話してみたくて」
りんなははいと呟いてベンチに座る。それを見てから雅臣はベンチに座った。
「あの、私と話したいって……?」
少し間が開いたのでりんなが話し出した。雅臣はりんなの方を向いて話し出した。
「貴女は真なる神を呼び出せるんですよね?貴女はどうやってその力を得たんですか?」
雅臣の母であり想い人でもある真なる神。逢いたいんだなとりんなは思った。でも創世神があんな事になって。もう逢えないのかな。とりんなは思いながら話した。
「私がたまたま湖に手を入れた時に真なる神が現れて。何もしてません。本当に。ただ水に触れただけなんです。ごめんなさい」
雅臣は少し残念そうにしてりんなに話しかける。雅臣は自分の力を使って真なる神に逢いたいのかな?とりんなは考えていた。
「そっか。波長が合うのかな。そうか。真なる神をどうにかして目覚めさせたいんだ。それは私の気持ち以上に世界の安寧の為に」
雅臣は落ち込んでいた。りんなはどうすればいいのか分からなかった。思わず雅臣の手を握って言った。
「力になれなくてごめんなさい。でも、私に出来ることがあったら仰ってください。真なる神に逢いたいですよね。どうか気を落とさないでください。真なる神も雅臣さまと逢いたいと思われてると思いますから」
あまりにも目隠しをしていても悲しそうなのが分かるから、りんなは思わず力いっぱい言ってしまった。
雅臣は少し笑ってありがとうと言った。その時思いっきり手を握っていた事に気づいて慌てて謝った。
「ご、ごめんなさい。雅臣さまに軽率に触れてしまって」
りんなが手を離そうとしたら雅臣が手を握ってきた。
「あたたかい。ほかのひとの温もりなんて久しぶりです。こんなに暖かいものなんですね。真なる神に……母に抱き締められた時の事を思い出しました」
りんなは悲しくなってしまった。雅臣さまはものすごく偉いからほかの神が気軽に触れない。だからほかのひとの温もりを感じることが無かったんだ。思わず涙が出た。
「ごめんなさい。雅臣さま。私……」
りんなは謝ったが、何に対して謝ってるのか自分でも分からなかった。ただ悲しかった。家族に甘えて育つことが出来なかった雅臣が可哀想で悲しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます