第118話
りんなは授業しにくくなったと感じていた。なんだか生徒の様子がおかしい。今まで授業の後聞きに来ていた生徒もなんだか遠巻きなのだ。教え方が駄目なのかな?と職員室でも考えていた。なんだか最近おかしい。そして悩んでる時多槻の姿を見つけて話しかけた。
「多槻さま。あの、相談があるんです。みことの仕事も手伝うために神の国と教師両方する為に力を貸してくれませんか?」
「やっぱり付き合ってるの?」
思わず多槻はそう言ってしまった。好きな人の傍にいたい。だから神の国の仕事を手伝う。あまりにも自然だから。
「付き合う?誰と?私誰とも付き合ってませんよ?」
りんながそう言うと多槻は頭を抱えた。一晩だけの付き合い……。付き合わずにそういう関係……それは友人としても親としても駄目だと伝えないと。
りんなはみんなの誤解を知り、どっと力が抜けた。あまりにも……。
「みことと付き合ってもないし、身体の関係もありません。本当に……。前にみことが疲れてたのか寝ちゃったので部屋に泊めましたが、何もありません」
「そのままりんなその部屋で寝たのかい?」
そしてみことに言われたように叱られた。みことが紳士だから良かったけれど、他の男性だったら!
りんなはモヤモヤしてしまった。心配してくれているのは分かる。でも、でも。
「多槻さまは私を振ったんだからそこまで言う権利ないと思います」
そう言って職員室を走り去った。多槻は言いすぎたなと思ってもやもやしていた。確かに振った相手だ。でも娘でもある。だから大切にしたい。それはりんなには辛い現実だから。
りんなは泣くもんか、泣くもんかと思いながら湖まで走った。
そこで大の字になって寝転んだ。ヤケになっていたのだ。
「私の事好きじゃないんだからそこまで言わなくてもいいじゃない!!」
そう言った言葉でりんなは傷ついた。好きじゃないんだ。分かってる。知ってる。けれど、好きになってもらいたかった。
「泣く事しか出来ないんだよね、悔しい。私……まだ認めなくないんだ。悔しい。私こんなに弱いの?」
涙を拭って、りんなは大声を出したくなった。
「ばーかばーか、私のばーか。何を期待してるの。無駄だって分かってるでしょ?生まれ変わっても駄目……なんだもの。ばーか、私のばーか」
真なる神に言っても仕方ない。ただ昔からここは落ち着く場所だからつい来てしまう。多槻が来るのを待ってる訳ではない。来てくれたら嬉しいだろうけど、余計に悔しくもなるだろう。
「ふーんだ、多槻さまに振られてから、他の誰の事も好きになってないもの。好きな人が出来るかも分からないもの。多槻さまのばーか。好きだもん。振られても好きだもん……」
思いっきり泣きたかった。泣くためには、ここより神の国の自室の方がいい。そう思って、神の国へ向かった。空気が痛い。本当に人間と住みたくないってのがよく分かる。与えられた部屋に入って泣いた。
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