第116話

「菜食主義が悪いとは思わない。そう言う考え方だからね。食べるものは元々命があったものだらけだ。その事実から顔を背けるのは良くない。狩りをして命を奪ってきたから肉を食べたくない。それは別にいい。命を無駄にしなければね。まりあは龍に肉を食べさせたら随分良くなると思う。龍と少しでも同化してるのなら」

りんなの部屋のソファに寝転んでそう言った。そんなみことにりんなは文句を言いたかった。

「解決策あるなら先に教えて欲しかったよ。ずっと悩んでたんだから」

りんなはみことの頭をぽこぽこ叩いて文句を言った。

「いや、偶然だよ。本当に。ただ流れであそこまで言った。本当に害獣駆除したしね。ふぁあ、ねむい」

そう言って数秒でみことは寝た。あまりの事にりんなは驚いた。

「そんなに疲れてたんだね。みこと、ありがとう」

りんなは毛布をクローゼットから出してみことに掛けた。そしてみことを見ながらりんなも寝落ちしていた。すやすや眠っているみことを見て、何だか安心して。眠りに落ちた。



朝りんなが起きるとみことに掛けてた筈の毛布が掛けられてた。みことはソファに座ってごめんなと呟いた。

「年頃の女性の部屋で寝ちゃって……。りんなもオレの傍で寝ない。オレが襲ったらどうするんだ」

りんなは目を擦りながらおはようございますと言ってからみことを見た。

「みことは襲わないでしょ?信頼してるし。私はみことのこと信じてるし」

あまりにも真っ直ぐなのでみことはそっぽを向いて言った。

「そうじゃなくて!オレが全面的に悪いけど、危機感を持ってくれよ。いや、襲わない。オレは襲わないけど他の男だったら起こせよ?起きなければ部屋から出て他の部屋で寝ろよ?」

みことは必死だった。りんなが自分の事を信じてくれてるのは嬉しいけれど、他の人に……と思ったら複雑だった。りんなは年齢の割にそういう所が幼過ぎるとおもった。

「どうしたの?みこと?私変なこと言った?」

あまりにもキョトンとしているりんなに脱力してしまう。もう歳の近いミカは子供も産んで育ててるんだ。みことは溜息をついてりんなの両手首を掴んでベッドに押し倒す。

「ほら、こんなに簡単に押し倒せる。力だって違うんだ」

そう言ってみことはすぐに離れたけど、りんなはベッドから起き上がらなかった。

「ごめんな、でも分かって欲しかったから」

「そうか……。そうだよね。みこと男の子だもんね。そうだよね。ごめんなさい」

りんなは天井を見ながら泣いてしまった。みことは思いっきり慌てる。これじゃあ本当に押し倒して……じゃないか。

「お、落ち着いてくれよ。ただオレであってもあんまり気を許さないで欲しくて……。ごめん。荒療治だったな」

みことは謝りながら部屋を去った。ずっと部屋に居ない方がいいと思ったからだ。

「間違ってない、よな?万が一誰かに気を許して……。うん、オレは間違ってない」

ただ、生徒がりんなの部屋から足早に出ていくみことを見てしまった。

「みこと……ごめんなさい」

りんなは慌てて起き上がって部屋を出てみことを探す。でも見つからなかった。泣きながらみことを探すりんな。さっきの生徒はずっと見ていた。噂は広がることになる。

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