第114話

「後悔はしてないから。うん。みことが守ってくれた私の魂……。大切にするね。この魂は色んな人に助けられた。私ひとりの物じゃない気がするの」

「りんなの魂はりんなの物だ。それだけは間違いない。ただ、みんなの想いがつまっている。それだけは間違いない」

みことは外で遊んでいる生徒たちを眺めながら言った。

「まりあが先生になったらりんな、神の国で仕事しないか?」

突然の事でりんなはびっくりした。神の国で働く?

「オレが暮らしていて。はっきりいって敵しかいない。暮らしにくい。でも仕事を任せられるのが今雅臣さんしかいない。まぁ、助けて欲しいんだよ」

実際みことも疲弊していた。雅臣が間に入る事で他の神が動いてくれるが、自分の指示だからじゃない、雅臣の指示だからだ。

「みことが泣き声言うの珍しいね」

「気を張ってたのが、今は緩んだからかな」

みことはよっと言いながら立ち上がった。そしてりんなの背中をぽんと叩いて言った。

「まりあが先生になるのも、オレが気をゆるめてるのも、何もかも本人が決めた事だからな。まぁ、まりあの件はまだ本人が決めかねてるんだろうけどさ。神の国に来るのは考えておいて欲しい。本当に息苦しい生活だよ」

みことがここまで言うのなら本当に辛いんだろう。りんなは悩んだ。まりあがどうするか決めてない状態ですぐに決める事は出来ない。

「あのね、まりあにもゆっくり悩んで欲しいの。まだまだ若いから今すぐ真龍帝位になるか、先生になるか。だからね、私定期的に神の国と地上で勤務するってのは無理かな?」

「いや、それでいい。ありがとう。ずっとあそこは辛すぎる。創世神が狂っていったのも少しは分かる。あ、少しだからな?」

心の底からほっとしたような顔をしたみことを見て、りんなは安心するような不安なような気持ちになった。

「みこと、今日私の部屋でお茶でも飲む?ご飯も食べるでしょ?まりあに栄養つける為に一緒に食べるようにしてるの。一緒に食べよ?」

りんなもみことを救いたかった。自分がどれだけ救われたのか分からない。けれどみことが苦しんでた姿を見て、どれだけ苦しめたのか考えたら苦しくてたまらなかった。少しでもみことの気が晴れるなら。りんなは頑張ろうと思っていた。

「今日の夕御飯なんだろ。楽しみだな。オレ肉食べたい。焼肉がいい」

「みこと。それは外でしか無理でしょ、焼きながら食べたいんでしょ?」

りんなが網で焼肉を食べる方法を教えた時、みんながイキイキしていた。素朴に美味しすぎたのだ。みことはそれを気に入って食べたい食べたいとよく言ってたのだ。

「まあいいか。久しぶりにみんなでご飯はいいよな。まりあが色んな物食べれるようになるといいんだけどな。絶対肉食べたら強くなる!」

みことも少し話して気が晴れたのか、食堂で食べるのが楽しみになった。元々みんなで食べるのは好きだった。みことが仲良かったメンバーはほとんど国に戻って先生をしたり仕事をよりよくする為に帰っていたから。みことは寂しかったのだ。本人が気づかなかったのだが。いろんなことがあって、悩み抜いて。どうすればいいのかずっと悩んでたので、その時は寂しくなかった。目的が無くなった今寂しいという気持ちがうまれてきたのだ。

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