第113話

「違うんです。私が……優柔不断なんです。私があの国にいた時……」

点滴を受けてる間まりあは心の中の辛いことを打ち明けた。

「そっか。ずっと生き物を狩ってそれが罪悪感だったのね。ごめんなさい」

りんなはまりあにぺこりと頭を下げた。まりあはびっくりして慌てた。

「り、りんなさまが謝る事じゃないんです。私の器が弱いのが全ての原因ですから」

りんなはまりあの頭に手を置いた。少しでも落ち着いて欲しくて。

「それは貴方のせいじゃないでしょ?貴方の能力が勿体ないから……私達が先走ってごめんなさい。まりあが自分で決めないといけないのに。ただ、食事はして。何より食事は身体を作るものなのよ。命の尊さを考えるなら、命を無駄にしないで。私達は他の生き物の犠牲の上に生きている。それは他の生き物も同じ。草食動物でも生きてる植物を食べてるんだから」

睡眠と食べ物は心と身体をつくる。だから大切にして。今まで犠牲にしてきた生き物の事も考えて、命を大切にして。

そう言ってりんなは去った。りんなは多槻に実際に狩りをして苦しんでいた事を伝えた。多槻はそっかと呟いた。

「まりあは真龍帝位にならないかもな。でも龍冠位として教師としてここに居てもらうのもいい」

「そうだね。まりあがどう願うかわからないけれど」

2人は割と諦めていた。それでもいいと思うしかなかった。ただみことは2人に話してはいなかったけど、龍使いに興味が向いていた。雅臣に尋ねてみても創世神と真なる神が作った世界なのでと。

みことは真なる神から色々聞いてみたかった。ただ真なる神と話せるか分からない。その事で神の国での嫌がらせは割と無視できた。神々も嫌がらせしてもどうしようも無いことは分かっていた。みことがそれに応じないから続けていたが勢いは弱くなっていた。

「まりあが真龍帝位にならなかったら当分なれそうな人はいなさそうね。まぁ優秀な先生が出来るのはいい事よね」

りんなも多槻も諦めていた。まりあ自身が追い詰められたようにやつれていったから、無理しないでと伝えていた。

「ごめんなさい」

まりあは多槻やりんなを避けるようになってきた。無理はしないでおこう。そうりんなと多槻は無言で決めたのにみことが地上に来た時りんなに言った。

「真なる神に龍の事聞きたいんだ」

「嫌だ」

りんなは断った。真なる神を呼び出す事をそもそも良くないことだとかんじていたから。

「え!オレずっと考えてたんだ。まりあの事……」

りんなは慌ててみことの口を塞ぎ、誰もいない教室に連れ込んだ。

「まりあはほぼ真龍帝位になる事を諦めてる。無理に真龍帝位になる必要は無いと思うの。だから」

りんながそう言うとみことはそっかと机の上に座った。こら、机に座らない!とりんなは教師として怒る。

「まぁまぁ、許して先生。どっちにしろ龍使いの事はもう少し知りたいけどな。まりあがならないのは残念だけど仕方ないか」

割とあっさり受け入れた。まりあが悩んでる事は分かっていたから、こうなる事も考えていたから。りんなはそのあっさりした態度にびっくりした。

「え、いいの?」

「本人が普通なら決めることだからね。りんなだけはオレのわがままだけど」

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