第112話
まりあは部屋で静かに龍使いの杖を出し、龍を出した。
「ルナ。あなたはどう思う?」
「私は貴方に育てられた。貴方と共に生きると決められている。貴方と同化するのもしないのも決めるのは貴方」
そう言うのは分かっていた。ルナは国を出たことにより仲間と離れ離れにされた。まだトティランカは龍が居るが龍使いとして行動していないから、他の龍と会うことがほとんどない。
まりあと龍のルナは考え方が違っている。だから龍使いになってこれ以上の同化ができるのか分からなかった。
「真龍帝位になる為には龍使いとして完璧にならないといけないの」
「国に戻れるの?」
ルナは国に戻れるということを喜ぶ。でもまりあは。
「もう狩りしたくないの。血塗れで動物達の悲鳴を聞いて。苦しいの」
まりあは単に命を奪いたくないと表面的に言ってるわけではなかった。龍使いとして命を奪っていた。血塗れの自分。それを食べている自分。嫌だったのだ。
狩りをする。解体をする血抜きをする。全て教えられた。けれどそれが嫌すぎて。龍のたまごを与えられた時に見たトティランカ。そこはまりあには夢のような国に見えた。みんな血まみれじゃない。
龍使いとしてある程度まりあが信頼され、1人で狩りに行くことになった。その時まりあは逃げた。トティランカに向かって。どうやって暮らすのか等考えられなかった。もうこの血の匂いの中生きるのは嫌だと。
そこで気まぐれらかくがまりあを見つけた。能力のありそうな子。そしてあの国からの子供。面白くなりそうだと思い、孤児院にいれ学校にも通わせた。まりあはらかくが優しい女神と信じていた。らかくは何か起きないかとわくわく楽しんでいただけなのだが。
まりあはトティランカに住んで肉を食べることを拒み始めた。肉が丸ごとの料理の時は手もつけなかった。スープに入ってる時は仕方なく食べた。どうしても動物の悲鳴と血の匂いを思い出すから。
段々食事自体あまり食べられなくなって身体も弱ってきた。だが、他人にバレないように必死に過ごしていた。そのため魂の器が徐々に弱ってきていたのを誰も知らなかった。
「もう血塗れの世界は嫌だよ」
まりあはルナに半泣きで呟いた。
「生きていくには命の上に成り立ってる事を認めないといけない。それができないからまりあは弱い」
ルナは空中を飛びまくりながらまりあに苦言を呈した。
「分かってる。でも苦しいのよ。自分が殺した動物たちの悲鳴は忘れられない」
命の克服。それが出来なければまりあは先に進めない。苦しかった。
まりあはその日から何も食べられなくなり、教室で倒れた。
点滴を受けてりんながお見舞いに来た。
「悩ませちゃった?ごめんね。貴方が真龍帝位になれるようにって私達が急かしちゃったね。ごめんなさい。私達の言葉より自分の気持ちを優先してね。そうだよね、ごめん」
りんなが落ち込んでまりあに話しかける。いくらなりたがってたからと言って焦らせたかと謝りまくった。
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