第111話

「まりあ、君はどんな方法を使っても真龍帝位になりたいか?」

多槻は授業の終わりにまりあを呼び出し、そう聞いた。

「はい。でも……どんな方法でも?誰かが傷付く様な事だったら嫌です」

まりあは優しかった。その優しさが器の弱さに現れてる気がした。まりあはいつも何かに怯えていた。それはあの国から逃げて龍使いであることを隠していたからなんだろう。多槻はまりあの頭を撫でた。

「優しいね、まりあ。そんなことはないよ。ただ君が生まれた国に行ったんだ。そこで可能性を教えられた」

子供扱いやめて、髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃうと文句いってたまりあが黙った。

「あの国に行ったんですね。私は送り返されるんですか?」

「送り返すというか、まりあには龍使いになって龍と同化出来るようになって欲しい。そうしたら真龍帝位になれる可能性が高い」

まりあは真っ青になってふらついた。慌てて多槻はまりあを支える。

「私は……あの国が嫌でした。ずっと野蛮な狩りでしか食べ物を得られない、あの国は……。私は生き物を殺したくないんです」

多槻はため息をついた。長く生きてるとそう言う人たちも沢山見てきた。でも、何かを食べる飲む。それは何かの命を奪って生きながらえてるのだ。

「たとえばさ。マンドラゴラは声を出すよね?あれはただの野菜?」

魔法の国は魔法のためにいろんな植物や生き物を改良してよりよく暮らすために過ごしてきた。

「水もこのままだと不衛生だから殺菌の為に煮沸する。菌がいるから。その菌も生きてるよね?なにも殺さず生きていけるなんて傲慢だよ」

「でも、木の実とか野菜の実の部分とか……玉子とか生きてるか分からないものもあります」

「木の実や野菜の実の部分はその木や野菜の子供のようなものだよ。それを毟りとって食べるのは命を奪うのとは違うの?」

多槻はいつもの事だと思った。動物は表情がある。血もでる。だから生きていると感じられる。それを殺すのは苦しい。その思いは大切だ。食べ物を無駄にしない為に。

「僕はね、まりあ君の様な考えの人達を見てきたよ。そりゃあいっぱいね。でも。誰も幸せそうじゃなかった。必要な栄養素が偏ってるせいかな?攻撃的になったり引きこもったり。僕もね、無駄に命を落とすのは嫌だ。だけど全てに命はある。……真龍帝位になれば飲食しなくても生きていくことはできる。ただ心の栄養の為に神も飲食するけどね」

狩りが当たり前でずっと恐怖を締めているから、生き物を犠牲にするという行き方が嫌だった。ならば神になればいい。人の理から離れるから食べなくても存在出来る。

「無駄に命を奪わなくてもいいんですか?」

「それがまりあの希望ならね」

「僕は命の上に生きていると思うから無駄とは思わない。そのために殺した生き物を食べずに破棄する方が無駄だと思うから。だから考えて欲しい。君が真龍帝位になる為に龍使いになるなら、りんながサポートすると言っている。一緒に国について行ってくれると思う。強制は出来ない。まりあの人生だから。でも僕はならないのは勿体ないと思う。勿体ないと思うからみことも動いてくれてるのだから」

考えておいてと多槻は言って去った。どうしても人生の分岐点は自分で選ばないといけない。だからこそ。

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