第108話

りんなは集めた木の実を触りながらそうねと呟いた。

「今までやった事がないから確実性はないけど、チャレンジするのはいいかもしれない。龍使いが真龍帝位になってはいけないと記述されてないはず」

みことはずっと腕組みして考えてた。龍使い。あまりにも知らない世界。その世界を知らなければいけないのかもしれない。まりあが真龍帝位になるとしたら尚更。

「まりあの生まれた国に行ってみたいな。話を聞いてみたい」

「第一神がおいそれと動くのは駄目よ。それに宗教が違うのよ?行くなら私か多槻がいいの。みことは動かないで」

みことが思いついたがりんなが慌てて止めていた。龍が最高の存在。その龍と共に生きる道を選んだ人々。

「多槻。多槻にたのもう。多槻ならオレが知らない世の中を見てきている。……まりあ。君はトティランカに来て良かったと思ってるかい?」

みことはりんなに言ったあと、優しくまりあに話しかけた。まりあは真っ赤になりながら呟いた。

「はい。私は龍使いになりましたが国のあり方には不満がありました。幼い時に龍使いになったので親は喜んで居ましたが、私は我慢が出来ずに国を出ました。トティランカに来れて良かった。……魔法が私には楽しいのです。もっと魔法を勉強したいです」

みことはまりあの頭を撫でて頑張れ、出来るだけ応援してるからなとにっこりと笑って言った。不安そうだったまりあは泣いてしまった。みことはまりあが泣き止むまで横に座り背中を撫でていた。

りんなはみことと目を合わせて頷いて多槻の元に向かった。まりあの為。


「みことが……。そしてまりあが龍使いだったのか。あの国は僕も真龍帝位になってから行ったことがある。あそこの国で神の供え物は大切にはされてなかった。でも魔法が使えるから狩りで重宝されてたらしい。あの国は独特の文化で、交流するのは難しいかもしれない。でもまりあが真龍帝位になれるチャンスになるなら、検証してもいいな」

多槻はそう言い、マントを羽織った。

「もう向かうんですか?」

「あの国は特殊な術がされている。多分神々と分裂した人々の集まりだよ。だから時間がかかる。その間生徒を頼む」

多槻は龍を呼んで乗りながら言った。りんなははいと答えたが、自分ひとりで生徒を見られるか心配だった。まだまだ未熟だから。でも今はまりあしか真龍帝位に慣れそうな生徒はいない。そしてまりあが真龍帝位になりたがっている。力になりたい。

まずは。木の実をジャムにしよう。それからだなと思った。忙しくなるなと。

本当に全ての神の供え物を助けようとしたんだな、凄いなとりんなは考えながら木べらを動かしていた。じっくり弱火で。

今の生徒数人はある程度のレベルになれる。国に戻って教師になるには良いぐらいの生徒は複数人いるが、真龍帝位にふさわしい生徒はまりあ以外にいない。だから多槻がまりあの事を気にしてるのは仕方ない。でも、もし……。

「ううん、考えちゃ駄目。まりあは一生懸命なんだから。私が余計なこと考えちゃ駄目。ジャムも焦げちゃう」

必死に無我夢中でジャムを作った。ついでに果樹酒も作った。

「はぁ、何やってるんだろ私。ジャムは魔法で送ろう。タイミングとか合わせるの大変だし」

このジャムは麗美が、りんなの姉が大好きだった。母も好きだった。食べてくれるといいなと思って数個入れて。魔法を唱える。

「また行けるといいな」

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