第102話

龍使いの卵が龍の谷で見つかった。その者に聞くと、ある地域で伝統として龍使いは教えられてきた。龍は神に近いが神ではない。

龍がどういう意味で存在してるのか実際に分からない。だから神の使いであるが、使役しては駄目なものでもない。

「龍使いか。気にはなるな」

毎日怪我だらけで神の国にいるなら、気になった龍使いを調べてみたくなった。

「龍は真なる神が作ったと聞いてます。だが何のためかは知らないのです。私たちの言葉を伝えるためだけならあんなに存在しなくてもいいですからね」

真なる神に聞いたとしても。多分あの人は教えてくれないだろうな。

いつか知れたらいいな。今日も疲れた。みことはそう思って、ただ倒れるように寝た。

「みんなに会いたいな。りんなにお茶入れてもらいたい。いや、お茶のいれかた教えてもらおう」

みことは雅臣に伝えて地上に降りた。やっぱり神の国にいるのはストレスがたまる。多槻みたいに地上にいるのが正解なのかなと思っていた。

龍の谷に立ってぐるりと見回す。どうやって龍使いは龍を使役してるんだろう。不思議だよな。そう思いながらぽんぽんと跳ねるように進む。

「創世神は真なる神のことしか考えてなかったって言うのは本当だな。龍の谷こんなに危ない。人がいたら……」

そう呟きながらゆっくり街に下ってる最中少女に出会った。少なくとも生徒では無い。龍使い……?

「君は?」

「ああああああ!ごめんなさい。見つかるなんて。やっぱりお祖母様の言うように夜にすれば良かった。でも怖くて」

噂をすれば影がさす。話をすると龍使いの卵だった。

「ふーん、君の国では神より龍を尊ぶのか。なのに使役する。面白いね」

みことは少女に話を聞いた。小さい小さい国。トティランカの傍にあるが国というより集落に近い、だが他の国とはほぼ接触せずに龍の谷を崇めていた。

「神が目の前に現れる世界なのに神より龍の方が偉いんだね。それを支配することは罪ではないの?」

おずおずと少女は答える。話してるのが神であるみことだとは知らないから。必死に逃げることを考えながら話をしていた。

「龍から生まれたと私たちは伝えられてます。私たちはそして龍と語り合う。それが私たちの生まれ育った世界の教えです」

どう見ても他の人間と同じにしか見えない存在のその少女。みことは興味を示した。

「ありがとう。知りたかったんだ。お礼にふもとまで連れていくよ。立場的にはね、一応人払いしなくちゃいけないから。次から気をつけてね」

「ありがとうございます。あの、お名前を教えてください。私はひなた」

「オレは……みことだよ。まぁまた会うかもしれないね。それじゃあ」

ふもとまで連れていき、去っていった。トティランカに侵入できるとは確実に力をもつ種族なんだろう。みことはその国の文献を調べた。あまりにも無さすぎて。その国に行くしかないと思った。

「すぐじゃなくてもいいか。みんながどうしてるか見に来たんだよな」

龍使いには興味があるが、みことの精神が限界だった。やっぱり神の国で雅臣以外に味方がいないと。りんなの部屋をノックした。

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