第100話
りんなが真龍帝位となり、地上で教えるのは多槻とりんなになった。みことは約束通り神の国に行って第一神として仕事をすると。みんなはみことが第一神とは知らない。だから居なくなるのを悲しんだ。
「ずっと神の国にいる訳じゃないから。時々は来るから。りんな、オレの代わりとして教師として、頑張って欲しい」
「はい」
多槻はりんなと話すのが難しいと思っていた。どういう態度を取ればいいのか分からなかったのだ。
りんなは普通に多槻に話しかけ、笑ったり怒ったりしていた。多槻もそんなりんなの態度で少しづつ普通に話せるようになっていった。
「まりあの龍冠位の試験をかんがえないと」
まりあの魔力の弱さをクリアする為に多槻が術式を考えていたが、どうしてもそれだけでは賄えない。そしてまりあが望む真龍帝位には程遠い事を感じていた。だが、まりあが真っ直ぐひたすら真龍帝位になる為に努力している姿を見ているので、どうにかして力になりたかった。魔力の弱さ。だが知識量は半端ない。図書館の半分ほど読んだのかと思われる程の知識量。だからこそ、魔力の弱さをどうにか出来たらと日々考えていた。
「魔力が弱いのは魂の器がよわいから」
みことが雅臣からはっきりと告げられた。魂の器は真龍帝位になれば補える。しかしその真龍帝位になる為には魔力が無ければいけない。
「……器は借りればいいのよ。まりあが私の身体を使って魔法を使えばいい。それだけよ」
前例がないからそれがダメだという規則も無い。ただ負担がお互いに大きい。だから先延ばしでおいておいた。
ミカとカノーイに子供が生まれたと連絡があった頃、りんなに会いに来た人達が居た。高弘とゆねみだった。
「久しぶり。私達ね、医者になれたの」
久しぶりにあった2人は随分大人になったと思った。
「りんなが真龍帝位になったのは聞いてたんだけど、私たちも医者になってから会いに来ようと約束してたの。今は研修医よ。もう、心が折れちゃう」
みこととりんなが真龍帝位になり、嬉しいと話す。2人が東京の大学に進み医学生になった話。わいわいと楽しく話した。
「りんなが真龍帝位になるとは思わなかった。ずっと苦しんでるんじゃないかと、ずっと思っていた。憎まれてると思っていた。だから会いに来れなかった」
ゆねみは多槻との間でりんなを産んだことをずっと後悔していたのだ。いくらりんなを助けたかったからと言って、多槻を父にしてしまったことを。
「ううん、私を産んでくれてありがとう。私には母親が3人もいるの。だから幸せだよ。産んでくれたから、私は生きられた。ゆねみが決意してくれなかったら私は消えてたもの。ありがとう、お母さん」
2人のわだかまりをお互いに吐露して。抱き合った。その日2人はりんなの部屋に泊まりずっと話した。今後のこと、決めたこと。それぞれ。
そしてまた会おうねと言い合った。ゆねみは多槻にりんなをよろしくと。それだけを言った。
多槻は礼をして。それ以上会話は無かった。どうしても言葉が続かない。拗れに拗れた想いは氷解出来なかった。
「研修医はしんどいよ。でも二人共目標をもっているんだよ」
高弘は外科医をゆねみは麻酔医を極めると言っていた。2人は日本できちんと生きている。りんなは本当に嬉しかった。去っていった2人をずっと眺めて。またねと扉を触った。
「もう、会えないかもしれないね。でも、会えて良かった」
誰に話してる訳でもなかった。ただ日本を思い出し少し泣いた。こっちで暮らすことを選んだが、日本を嫌いになった訳ではない。だからこそもうもどれないのは寂しかった。
戻りたい訳では無い。ただ懐かしいのだ。もう会えない家族の事を考えて。みんなの前で泣く訳には行かないので、そっと泣いていた。
「やっぱりな。さびしくなった?」
座って泣いてるりんなの横に座ってみことが話し出した。
「みこと……こっちに来たの?2人帰っちゃった」
「ちょっと手が離せなかったからね。オレも2人に会いたかった。また会えるよな」
りんなは泣きながら頷く。
「でもこれから2人は向こうの生活が忙しくなるから、会うのは難しいかもしれない」
「だったら、変装でも何でもしてでも向こうに行って、会おう」
ゆねみにそっくりなりんなが向こうに行くのはややこしいから、りんなは日本に行くのを諦めていたから。そう言って笑うみことの言葉にびっくりした。
「そっか。変身魔法使えばいいのか」
りんなは笑いながら泣いて。部屋に戻った。
「みこと、いつもありがとう。忙しいのに」
「また落ち着いたらお茶飲ませてくれよな」
みことはりんなの背中をぽんぽんと叩いて元気出せと言った。
「真龍帝位になる事の辛さがこれから余計にでてくる。置いていかれる事だ。苦しいだろうけど1つずつ乗り越えよう」
そう言ってみことはじゃあな、と笑った。りんなはありがとうと伝えた。
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