第98話 真龍帝位の試験

神の国は聞いていた通り息苦しく歩く度に疲労感が半端なかった。

そしてりんなの目の前には目隠し神の雅臣が立っていた。

「ようこそ、真龍帝位の試験に。まずはここまで来れた事、おめでとう」

普通なら第一神が試験をするべきだがみことが試験をするのは公平では無いと雅臣と話し合い、雅臣が立ち会う事になった。

「よろしくお願いします」

りんなはお辞儀をして雅臣をみつめる。試験内容が語られ、小部屋に通され。試験が始まった。


地上ではりんなが死なないように。それだけの術式を駆使して。みことは待った。試験に手は出せない。だからいつものようにみんなに勉強を教えて信じて待つしか無かった。

「りんなが、真龍帝位になれれば。私にも希望がでます。やっぱり真龍帝位になりたいですが、魔力の弱さは……」

まりあも違う意味でりんなの心配をしていた。自分が真龍帝位になれるかどうか。自分より先を進むりんなが無理なら、自分はその先を行かなくてはならない。それは余りにも険しい。

「まりあはまりあで頑張ってる。それはオレも知っている。まりあはどうして真龍帝位になりたいんだ?」

まりあは真っ直ぐにみことを見て迷い澱みなく言った。

「世の中をよりよくしたいのです。まだまだ貧富の差で苦しんでる人も多いです。私が微力ながらでも、神となって人々を導けるのなら。だから、真龍帝位になりたいのです」

人の為に真龍帝位になりたい。その真っ直ぐさはみことには目を逸らしたくなる位に純粋だった。

「今まで真龍帝位を目指した者はそんな人は居なかった。まりあが真龍帝位になるのは楽しみだよ」

余りにも純心だと思った。どうしてここまで純粋無垢に真龍帝位に憧れられるのか不思議だった。

「私の国で最初の真龍帝位が治水を行ってくださって。それで死ぬ人が減って少しづつ暮らしが豊かになったそうです。私は幼い頃その話を聞いて、真龍帝位に憧れを持ちました。真龍帝位にお会いしたい。真龍帝位が居なければ私は生まれなかったかも知れません。永遠の恩人なのです」

まりあは最初の真龍帝位に会ってお礼をする為に真龍帝位になりたいと。もう会ってるんだよとは言えない。多槻は必死に隠してる事だから。

「会えるといいな」

「はい!」

まりあはりんなと違う意味で守らないといけないと思った。これだけ純粋無垢な人間は悪い人に騙されたら堕ちる所まで堕ちる可能性があるから。

第一神となってもやれる事は少ない。神とはなんだろうとみことも考えていた。たった1人の女の子を生かすために時間を戻して。

後悔はしていないが無力さは辛かった。

「今は祈ろう。りんなが真龍帝位になる事だけを」

天を仰いだ。ただ、待つしか出来ない。苦しかった。


りんなは小部屋に入れられ、真っ暗な何も無い部屋にいた。魔法を使わずそこで10日ただひたすら過ごせと。その間生理現象は起こらない。だからご飯も飲み物もトイレもない。

真っ暗で何も見えない中ただ過ごすことを強いられた。これが試験?体力は削られていくが神の国に来る前に施していた魔法のお陰でなんとかなった。新しく魔法は使うなと言われていたが来る前にかかっている魔法は別にいいと言われていた。

ただ部屋の大きさも分からず、目を閉じてもあけても同じ真っ暗な中で居ることは、精神的に追い詰められる事になる。気が狂いそうだった。ただ、10日耐えられればいい。それだけだが。嫌な事を思い出す。嫌だ、嫌だと思ってもどんどん自分の悲しかった事、嫌だったことを思い出す。息苦しく感じた。耐えきれないとも思った。だが、みことの事を思い出したら耐えなければとかんがえなおす。

何時間何秒経ったのかも分からない。生理現象が起こらないから、眠気もこないのだ。普通なら気が狂うような状況にされたのだ。

雅臣はじっと見つめていた。雅臣には真っ暗な中過ごしているりんなを見ることが出来る。気が完全に狂う前には救わないといけない。ふたりは時間が過ぎていくのをただひたすら待つしかなかった。

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