第97話
「みことは凄いね。大切な存在だったでしょ?」
「そりゃあね、愛してたし大切だった。それは本当だし、過去の事だから。変な男じゃなくカノーイで良かったと本当に思うよ」
りんなは本当に自分がちっぽけだと思った。こんな風に、好きな人が幸せになる事を喜べるようになりたい。自分はまだまだ未熟だと。
「ずっと精神的にしんどい事が多くてつかれてたから。本当に良かったよ。行こうと言ってくれてありがとう。また次はりんなが真龍帝位になったと言うとき行こうな」
りんなは色んな思いがあふれ、涙を流した。
「うん。真龍帝位になったよって言いに行けるように頑張る。今日改めて決心したよ」
みことはいつものように背中をぽんぽんと叩いた。
「泣く時は思いっきり泣け。どんどん泣け。そしてまた明日から頑張るんだ」
「うん、うん。みこと、ありがとう。貴方に会えて良かった」
そう言われたみことはにっこりと笑った。
「そうだな、オレもりんなに会えて良かった。色んな事があった。でも、これからもよろしくな」
りんなは泣きながら笑った。少しづつ前に進むのは色んな事がある。お互い好きだったのに別れたふたり。
ゆっくりと時は進む。残酷なまでに。りんなは何回も死にそうな目に逢いながらみことに助けられ、真龍帝位の試験の資格を得た。やっとここまできた。少しみことはほっとした。だけど、りんなは運命的に死に近づいている。一刻も早く試験を受け、合格しなければ。
試験を受けてる間に運命が動かないようにしなければならない。まだまだやる事がある。
まりあも順当に位を上げてきた。ただ魔力が少し弱いのでそれを補助する魔法を使って補わなければならない。その為に多槻は術式を考えていた。生徒達ももう文句は言わなくなっていた。だが、りんな達の努力を見て真龍帝位を諦める者も出始めた。仕方がない。能力があるものが物凄い努力をしてやっと権利を得た。それは無理だと心が折れる生徒が出るのは当たり前だ。
せっかく能力があるのに勿体ないとみことは歯噛みするが、無理やりやらせようとしても無駄なのだ。ただ、新しく学びたいという生徒も現れた。生徒が入れ替わりながら、りんなが神の国に行く日になった。
「今回真龍帝位になれなかったとしても、悩むなよ。簡単な試験じゃないから。だから。頑張れ」
簡単では無い。だからみことは何回も時を戻してまでここまで来たのだ。
「みこと……。本当にありがとう。でも私みことにここまでして貰えるような事してないよ?ごめんね」
みことはりんなの背中をぽんぽんと叩いた。
「最初はね、母さんとオレを助けてくれた恩だった。りんなが居なかったらオレは真龍帝位になれなかった。だからそのお礼。でも途中から。たった1人の女の子も守れない第一神のちからの無さが歯がゆかった。ただ、自分のちからの無さを思い知らされ、その運命に打ち勝ちたかった。オレの意地だよ。途中からはね」
みことはやっとここまで来たんだと続けた。
「りんなは死なせない。必ず」
意地であっても、なんであってもりんなを生かすのが目的だった。真なる神も良いと言ってくれた。だから今はその為にすすむ。だから、他のことは感情を殺して進められた。
そんなみことは他の神々も認めはじめていた。誰よりも力を持つみこと。それだけで第一神と認められる訳では無い。だが雅臣は忠臣を誓った。それが故にほかの神々も表立って何も言えなくなっていた。
りんなが真龍帝位になれば、地上での役目は終わる。そうしたら第一神として役目を果たす。そう雅臣に宣言していた。
「行ってきます。頑張ってくるね」
りんなは神の国へすすんでいった。
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