第96話
本当の意味で愛されないと理解したりんなはゆねみの力を受け入れる事が出来た。今まで自分とゆねみは同じだと認識して、いつか受け入れられると信じていたから、ゆねみの力が無くてもいいと心の片隅でゆねみを妬んでいたから。
元々同じ存在でも違う存在。一卵性双生児のように、元が同じでも別人。
そして元が同じな為に拒否されるという事を受け入れることにした。苦しくても。苦しくても。頭がくらくらしてみことの部屋で気絶し、自分の部屋で起きたりんなは。みことに迷惑ばかりかけてると心を痛めた。
どうしてここまでしてくれるんだろうか?そんなにも母親が大切だったのか。不思議だった。でもその思いを無碍にする訳にはいかない。だから努力した。ある日みことは体力作りをみんなに言った。神の国での試験は体力がないと駄目だから。自分も10日位過ごしたからと。みんなが文句を言うなか、まりあは黙々と体力作りをした。りんなは踊りを奉納してるからある程度体力はある。だから他の人より無茶な事もさせられた。りんなだけ特別扱い、ある生徒が口にした。次々と同意する者がでて陰口を叩いた。
「みことさまが認めた人だから特別扱いなんでしょ。実力をつけてみことさまに認められたら良いだけ。陰口叩くなら体力作りか勉強すれば?」
まりあは真っ直ぐだった。真っ直ぐに真龍帝位を目指していた。その言葉に違わずまりあの努力はほかの生徒よりも凄かった。睡眠不足だとみことは思い、睡眠をとるように言った。まりあは大丈夫です!と答えたが睡眠で記憶が定着する。勉強も睡眠もどちらも大切だと言った。まりあは分かりましたと言ってその日から睡眠時間を少し長くした。まりあも真龍帝位を目指せる。そう思ったみことは多槻にまりあを見てほしいと頼んだ。多槻はあくまでも人間のふりをしている。だから神であるみことの頼みを断る訳にはいかない。
まりあは不満だった。神でもない多槻から学ぶという事に。みことは自分の先生だった多槻から新しく得るものが確実にあると。
だれた生徒達から引き離す方がいいと思ったのだ。りんなとまりあの能力は高い。ほかの生徒は真龍帝位を目指せる可能性があるが努力が足りない。
何度も時間をまきもどしているみことには余りにもじれったかった。何回同じ事を教えてるんだろう。みことも精神的に疲弊していた。
りんなは休みの日にみことに言った。ミカとカノーイに会いに行かないか?と。みことも2人に会ったら元気になるだろうとりんなは思ったから。
みこともトティランカを離れるのは良いかもと思った。ふたりには何も伝えずに会いに行った。ふたりはミカの故郷で暮らしていた。ミカとカノーイの指導の元農業は発展していた。
「りんな!みこと!久しぶり!」
ミカは昔と変わらない笑顔でふたりを迎えてくれた。カノーイも2人が来たことを教えられやってきた。
久しぶりに会ってミカとカノーイは随分と変わったと思った。肉体的にも精神的にも随分変化を感じた。ミカは農業全般の指示をして、カノーイは土壌改良や種の改良を人々に教える。
やり甲斐のある指導者として凛としていた。みことはずっと笑顔だった。気の置けない仲間に会って。久しぶりに心から笑う事が出来たのだ。
「あのね。まだ先の話になるけど。私ね、カノーイと婚約するの」
そうミカが言った時りんなはみことの顔を見た。みことは心から嬉しそうに笑っておめでとうと言った。
りんなは戸惑いながらおめでとうと言った。
「ふたりに1番に伝えられて良かった。まだまだやる事があるから結婚も先なんだけどね、きちんとしようと約束したんだ」
「今日ここに来て、本当に良かった。おめでとう。また結婚したら教えて欲しい」
「うん、もちろん!」
ミカとカノーイに別れを告げ、トティランカに戻った。トティランカに戻ってりんなはみことにごめんなさいと言った。
「みことの気晴らしになると思ったのに、ミカの婚約とか……ごめんなさい」
そう言うとみことは不思議そうな顔をした。
「どうして?とっくにオレはミカに振られてるよ?それにカノーイは良い奴だからミカと幸せになると思うよ。だから良かったよ。いい息抜きになったよ。ありがとう」
本音だった。ミカとは真龍帝位になる時に道を違えたのだ。だから人として幸せになる姿を見られて本当に良かったと思った。
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