第18話
広辞苑より分厚い魔導書5冊。お義兄さんの家からひいひい言いながら持ち帰った。たーくんが3冊持ってくれたからなんとかなったんだけど。
たーくんにはお家に上がってもらって飲み物を出してもらった。たーくんも好きなオレンジペコ。
「あれだけの本を読むには。カードを登録しないといけないね」
たーくんは紅茶を飲みながら言った。私も思ってたんだけど。
「多槻さまってスパルタだよね?あれだけの本読むだけで無理だもん。うー、悔しいけどカード登録するしかないか」
カードに読み込ませたら私達は理解した事にはならないけれど、ぱらぱらと読んだ事と同じ感じにはなるとお義兄さんに教えられた。
どうしてもカードを登録しなければクリア出来ないもの。
「そうだね。このカードには容量があるのかな。どれだけの量を覚えさせられるんだろうか」
たーくんはそんな事を考えてたのか。考えもしなかった。だって魔法使いの道具とか何でも出来る感じじゃない?
「とにかく血を……。針か何かでやればいいんだよね?」
「……医者になりたいけど、血はやっぱり怖いんだよね」
そんな感じで何となく魔法の話じゃなくて学校の話になっていった。何となくたーくんは私とここで詳しく魔法の話をしたくない感じがしたから。
確かに笹原さんが家にいて、いつ部屋に入ってくるか分からないから魔法の話ずっとしてるのは良くないとは思う。けれど、たーくんは魔法を勉強しながら魔法を恐れてるようにみえた。
でも男の子の気持ちを踏みにじる可能性があるんだから、そんな事聞かない方がいいよね。
たーくんは医者になりたいんだよね?すごいよね。私は何も考えてないから。
何故なりたいのか。私は知らない。でもぼんやりと将来の夢持ってる人はいっぱいいる。私には特にないの。なりたいもの。
だから夢があるたーくんが眩しい。羨ましい。
「治したいと思ったんだ。……どれだけの力があるか分からないけど」
かっこいいな。たーくんは頭もいいけど顔もいい。お義兄さんに似て知的でスッキリした顔。もてるんだろうな。
たーくんの行ってる学校凄いし顔もいい。もてないとしたら出会いがないからだ。男子校だからね。
「凄いね。私には特に夢がないから。いいな……」
「見つかるよ。りんなはこれから新しい世界にも未来を見つけられるんだ。まだなりたいものに出会えてないだけだよ」
未来を見つける。なんだかいいな。
「そうだね。ありがとう」
2人でお茶を飲んだ。新しく入れ直す。蒸らしてる間なんとなく2人で砂時計を見てた。
「これを考えて作った人は凄いよね。1分はかれるように、3分はかれるように作ったんだから。職人の技だよね」
なんとなくものづくりの話をしていた。何気ない日々の会話。楽しい。私もたーくんも。このままの生活が続くと思ってた。なんとなくそういうものじゃない?
いじめもなく、学校で楽しく暮らしてるんだもの。笹原さんがカップケーキを持ってきてくれて、カップケーキやお菓子の作り方を話しになる。
なんの不安もない平和な日々。穏やかで。永遠だと思ってた。
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