第17話

「後1ヶ月くらいですね。どんな感じで……?」

通信教育ではない。どんな風に?

「ここトティランカは世界中から優秀な魔法使いを集めて教育している。そこで学んでもらう。……基礎からだけどスピードは早いよ。でも。多分。大丈夫だ」

多槻さまは遠くを見ながら言った。何だか心ここに在らず、そんな感じだった。

そんなに私が不意に使った魔法が良くなかったんだろうか?確かに自然に口から出てきた。懐かしい感じだった。

「りんな。君の使った呪文は古い術式だよ。少なくとも最近教えられてる方法じゃない。魔法にもトレンドがあって今はその術式は古いとされてる」

「え……?私そんな呪文どこで……?」

「前世の記憶だと思う。多分。時々前世の記憶を持った人は現れる。そういう人は魔法使いの位が上がりやすい」

そうか。私はここで生まれた。元々こっちの世界の人間なんだ。だから前世の記憶と言われたらおかしくない。でも。多槻さまはずっと何かを考えながら話してた。

「多槻さま。りんなの前世は今はおいておいた方がいいかと」

お義兄さんは少し疲れてるようにみえた。どうして私の前世で多槻さまは考え込むんだろう。

「……そうだね。うん。前世の記憶だったらこれからも少しずつ思い出すだろうし。ああ、そうだ。勉強だね。ここの初等クラスからはじめてもらうよ」

多槻さまはそう言いながら心ここに在らずだったけど、遠くを指さしながらあっちに学校がある。と教えてくれた。

「学校には寮があるからそこから通ってもらう。初等クラスは各国からレベルバラバラの子供が集められてるから2人には丁度いいと思う」

ハリーポッターの世界になるのか。魔法使いと寮ぐらし。ちょっとテンション上がってきた。魔法使いのステッキじゃなくてカードとかだけど。

私の前世とかよく分からないけど、魔法使いだったんだな。うん、思い出せたら便利だろうな。

私はのほほんと考えてた。でも多槻さまとお義兄さんはそうじゃなかった。私の前世。それは大きな鍵だったのだから。

らかくさまが楽しそうに言ってた理由も。何もかも。

私は生まれるべきだったのか。でも、生きていたい。そんなことを考えてしまう位にしんどい前世を知るまでは。

魔法の事で楽しかった。寮ぐらしだったら着替えとか色々必要だよね。洗濯機とかあるのかな?科学が進んでないこの世界ではどうなってるんだろう?

「洗濯機はないけど魔法で同じような事は出来るよ。だから安心して」

お義兄さんに尋ねたら科学は進んでないけれど同等の魔法は完備されてるとの事。携帯とかはないらしいけど。

とにかくこの時の私は魔法使いって事で楽しみしかなかった。魔法をもっと勉強したら、産んでくれた両親ともあえる。私は誰より呑気だった。

魔法使い、寮ぐらし。不安な事と言えば各国からのエリートが揃ってるらしいとのこと。

私基礎しか知らないよ?その応用しか知らないよ?

多槻さまは白龍で扉のまで送ってくれて。そこで私とたーくんに分厚い魔導書を数冊渡した。

「次に来るまでに読み込んでおくこと」

サラッと言うなー!!広辞苑より分厚いぞおおおおお!

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