第15話

多槻さまの事懐かしいと思える理由はもっと後に分かるんだけど。

私は呪われた運命なのかもしれない。そう思うのはもっと後なんだけど。

多槻さまに魔法の応用で空中に浮かぶ方法を教えて貰って少しずつ魔法の実践をした。魔法陣も組み合わせで色々出来る。勉強でも魔法でも。基礎を疎かにしちゃダメなんだと改めて思う。

カードの使い方を学んで。2人とも血をカードに垂らすことが出来なかったので実践は出来なかったけど。カードに魔導書の内容記録することが出来るのを教えてもらった。本にカードをあてて呪文を唱える。でもカードに記録されただけで私が理解してないから使いこなせない。うーん、もどかしい。

昔タイムパトロールぼん読んだ時みたいに本の内容すらすら記憶させる方法あればいいのに。

そんなあさましい事を考えてるのは多槻さまに見抜かれた。

「本をカードに読み込ませた事で一応軽く読んだことと同じにはなるよ。でもね。本当に記憶する為には自力で理解しないといけない。記憶しただけじゃだめなんだ。理解すること。それは魔法ではまかなえない。記憶する事と理解することは違う。それを覚えておいて」

うー、多槻さまは様付けされてる位だから偉いんだろう。でもやっぱり。高校生位の男の子に言われるのなんだか悔しい。大人の人なんだって分かってるけど、やっぱり外見のせいで悔しいのかな。

何となく反発したい自分がいるの。理由は分からないんだけど。心のどこかで。何かを感じてる。

「多槻さま、この魔法の組み合わせは?」

たーくんは熱心に多槻さまに尋ねてた。やっぱり地頭がいいたーくんは私が思いつかない事も考えてた。

「魔法で病気の原因が分かっていれば治せる方法があると思うんです」

血の流れ、ウイルスを殺す方法。たーくんは医療に使う方法を考えていた。

「面白いね。こっちの世界では魔法が主流のために科学がおなざりだ。医療に関してもそうだ。そっちの医学知識が魔法に応用出来るかもしれない」

2人は熱心に魔法で医療を使う方法を語り出した。私はついていけないのでお義兄さんの方を見た。

お義兄さんは何かを埋めてお花をそえていた。

「お義兄さん……?それは?」

お義兄さんは少し嬉しそうな悲しそうな顔をしていた。

「ゆりえの……前の妻の一部を埋めたんだ。僕達は駆け落ちだったからね。こっちの世界に帰って来れなかったんだ。でもゆりえは時々懐かしがっていた。だから向こうにも埋めてるけどこっちにも埋めてあげたかったんだ。彼女の生まれたこの世界に」

「お義兄さんも死んだらこっちにも埋めて欲しいですか?」

「今は思わないけれど歳を取ればそう考えるかもね。僕はこっちの世界にあまりいい思い出がないから。だからりんなちゃん。僕が死んだからといってこっちに埋めようとしなくてもいいよ。うるみが嫉妬しちゃうからね」

お義兄さんはこっちの世界のいい思い出がないのか。でも。お姉ちゃんと結構してもゆりえさんをここで1人ぼっちにするのは寂しくないのかな。向こうにも埋めてるからいいのかな。

私には分からない大人の事なんだろう。私はきょろきょろ周りを探して紫色の花を見つけた。

「あれをゆりえさんの所に植えませんか?お花があるとゆりえさん喜ぶと思うんです」

お義兄さんは私をぎゅっと抱き締めた。ありがとうと呟いてた。

お姉ちゃんと結婚してもゆりえさんと死別したから愛情はあるから。ひとりぼっちは悲しいから。せめてお花だけでもいつも咲いててほしい。お義兄さんはお花を植えて私は魔法をかけた。いつまでも咲いてますように。寂しくないように。自然に口から呪文がでた。

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