第14話

多槻さまもたーくんの魔法陣には関心していた。うう、私ももう少し丁寧に描けばよかった。

「さすがだね。2人とも本だけで本当にここまで短期間で出来るとは思わなかった」

多槻さまは手のひらを上にむけて何か呪文を唱えた。真っ白なカードが2枚出てきた。

「これを2人にあたえるよ。こんなふうにカードを作らなくてもこのカードにコピーさせればいい。でもこのカードにコピーしただけじゃ使えない。自分が理解してその魔法がどうなるか。使いこなせないのは覚えさせてるだけの代物だ。でも直ぐに魔法陣を選べるし、使い方次第では便利だよ。昔ながらの魔法使いは好きじゃない人が多いみたいだけどね」

多槻さまは少し複雑な笑顔をしながら私たちに渡してくれた。でもただの真っ白なカードにしか見えない。

「カードと契約しなければ使えない。カードに血を与えて名を唱えてカードの持ち主と認識させなければならない」

多槻さまは少しいたずらっ子みたいな笑顔で続けた。これを怖がる人間が意外と多いんだ。無理やり血を出さないといけないからね。

無理に使えとはいわないよ。カードを使うか使わないかは本人次第だから。血は1滴でいいよ。

たーくんが少したじろいだ。血と聞いて少しあおざめる。確かたーくんは注射とか大嫌いで嫌がると聞いた。

私は血を抜かれるのは嫌いじゃないけど、わざと傷つけないと血は出ない。痛い思いはやっぱり少し嫌だ。でもカードがあれば便利なんだよね。

「カードがあればこれから渡す本を覚えるのは楽になるかな?カードはカード以外の形にも出来る。普段使いやすいように好きな形にしてもいい。まぁ取り出しとか考えてカードのままがいいって人がほとんどだけど」

少しカードを握りしめた。でも、今は。それより違う事を進めたかった。

「少しカードに関しては考えさせてください。痛い思いするの躊躇しちゃうので。……あの……。私。ずっと考えてたんです」

多槻さまは私の方をみてなあに?と聞いてきた。なんだか不思議だった。多槻さまは懐かしい感じがする。そして一線引いておかないといけないという気持ちにもなる。色んな気持ちがせめぎあう。

「私の……本当の両親に会いたいんです。今の親に不満はありません。でも。……どんな人か会いたくて」

多槻さまは下をむいてかぶりをふった。

「まだ力が足りない。もし君の両親に会って。万が一君が生きてたことがバレたら。生命を狙われる可能性がぐっとあがるんだ。だからもっと魔力が上がって。身を守れる位にならないと。ご両親と君の命のためにもあわせられない」

そう言われて。全身から力が抜けた。ぺたんと座り込む。

そして自分でも思わなかったけれど。涙が零れた。会ってみたかった。会えると期待していた。せっかくトティランカに来たのに。ただの野っ原に連れてこられただけ?

仕方がないんだ。理解は出来る。でも感情は止められない。

「ごめんなさい。泣くつもりはなかったんですけど、勝手に涙が……」

止まらなかった。こんなに会いたかったのかとびっくりした。多槻さまは私の傍に来てしゃがんで目線をあわせてくれた。

「力をつけたら、必ず会わせるよ。ご両親もとても会いたがってる。だから今は我慢して」

なんだか懐かしい感じがして。余計に泣けてきた。前から思ってたけど多槻さまに会うとなんだか懐かしい気持ちになる。会ったことなんて無いはずなのに。赤ちゃんの時私を助けてくれたから懐かしいのかな?

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