第13話
「いらっしゃい。あら、汗だくじゃない。走ってきたの?」
お姉ちゃんが朗らかに私にはなしかける。たーくんが私にフェイスタオル渡してくれて汗ふきなよと言ってくれた。
まだ本格的に夏にはなってないけどもう暑い。汗がひかない。
「家からずっと走ってきたんなら喉も乾いてるだろ?」
お義兄さんは私の好きな炭酸水を渡してくれた。ぐびぐびと一気に飲んだ。そのおかげかなんだか少しだけだけどすっきりした。
「ちょっと悩み事あったから、吹っ切るために走ってきたの。運動出来る格好で来いって言われたし」
お義兄さんは微笑みながら私の頭を撫でてくれた。優しくふわっと。
こういう所にお姉ちゃん惚れたんだろうな。お義兄さんは年上だけどそんなに歳の差感じない。おっさん臭くないのだ。見た目も中学生の息子がいるとは思えない。多槻さまもだけど向こうの人って若く見えるの?
でも私ちょっと成長遅いかもだけど割と年相応だと思うんだけどな。ちらっとたーくんを見て確信する。うん。たーくんは普通に中学生にみえる。どちらかと言うと発育いい方だと思う。
「麗美。君は家に居てくれ。このカードは渡しておく。使い方は教えたよね」
お義兄さんはお姉ちゃんにカードを渡しながら言った。お姉ちゃんは行かないの?
「私はトティランカの人間じゃないから、リスクは減らすために。りんなとたーくんが家にいるふりをするのが今日の私の役目」
リスク。なんだか少し怖くなった。でもこの扉の向こうは魔法の世界。あこがれてた世界でもある。少しずつ私が選んだ事で物事が進んでるんだ。魔法を学ぶことも選んだ。
自分の覚悟を決めた。頭をうんと頷くように動かして。扉をみた。
ギイ。扉が開いた。
「お待たせ。さあ、白龍に乗って」
多槻さまの傍に龍がいた。手足があって羽としっぽがある。これは西洋風の龍だ。竜のほうがしっくり来るかな?
前見た時はちらっとしか見えなかったから分からなかったけど。
恐る恐る多槻さまが手を差し伸べて私を竜に乗るのを手伝ってくれた。つぎにたーくん。お義兄さん。
さっと多槻さまは私の前に乗って白龍と話した。
「いくよ」
白龍は羽を軽く羽ばたかせた。ふわっと空に上がっていく。
「いってきます」
扉の向こうにいるお姉ちゃんに向かって言った。聞こえるか分からないけど。
初めて。私が生まれた……故郷……?に来た。不思議だった。竜に乗るのはコツが必要で時々鱗を掴んでしまう。多分鱗を掴むのは痛いだろう。ごめんなさい。
多槻さまの指示もなしに白龍は湖の近くの開けた野原に降りた。
湖の向こうには山?崖?がある。湖は綺麗で水が青かった。
降りる時少し体が痛かった。竜に乗るなんて初めてのことだったから。
初めてトティランカに来たのにかっこよく登場!とかできない。馬にはじめて乗った時みたいに下半身ガクガク。立ってるのも辛いので座る。草むらだしいいよね。
「ごめんね、ここまで魔法で連れてこればいいんだけど魔法の波動知られたくなかったから。ここは僕が魔法かけてるから魔法いくら使っても気付かれないよ」
なるほど。だから私達を直ぐにここに連れてきたかったんだ。白龍は空に飛んでいく。
「また帰る時に来てくれるよ。りんな、高弘。僕はこの時を待ってたよ」
嬉しそうな多槻さま。本当に子供のよう。10歳以上上なんて思えないよ。
「まずは基本から見せてくれる?」
基本。火を出したり水を出したり風を操ったり。光らせたり。
とりあえずペンダントで解除して一通り見せた。たーくんもさらっと使った。草原だから火を使う時気を使った。お花とか燃えないように。
「じゃあ応用」
火を操ったり雨を降らせたり風で木に咲いてた花弁を散らしてみせたり。
多槻さまは笑顔で手を叩いて喜んだ。
「さすがさすが。こんな基礎とは言え本だけでよく使えたよ。魔法陣は使える?」
多槻さまはわざと歩きながら話し出した。私達は多槻さまについて行きながら答えた。
「使える……というか。ずるなのかな?一応ある程度の基礎は覚えましたが」
そう言いながらラミネート加工した魔法陣のカードを取り出した。
「なるほどね。でも枚数が多くなったら直ぐに取り出せる?」
私は頭振った。今は10数枚だからまだ少し時間かかるけど出せる。でもこれが魔法カード増えたら。
無理だ。
「一応基礎の魔法陣ここに書いてみて」
多槻さまは砂地のところに来て杖?みたいなのをいつの間にか持っててそれを私に渡してくれた。
一応何回も練習はした。10個程の魔法陣を書いたら多槻さまは納得してくれたように頷いた。
多槻さまが手をさっと横にふったら、私が書いた魔法陣は全て消えてた。次はたーくん。
こういうのに拘るタイプのたーくんは綺麗に魔法陣を描いてた。魔法陣1つ描くのにも性格でるんだなぁ。
お姉ちゃんがプログラムの仕事してるけど、プログラム1つでも性格って出るのよ。そう言ってたけど。うん、魔法陣描くのも性格出てる。
私割と細かいと思ってたけどたーくんに比べたら雑だわ。
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