第9話

「ありがとう。頑張って」

たーくんと多槻さまはそれだけでもっと複雑な事を伝えたみたいに見えた。たーくんは頭良いから色んなことを考えてるんだ。私は少し恥ずかしかった。魔法少女とか考えて……。

「その本は基本が載っている。まずはその本の全ての魔法を覚えるんだ。覚えた頃また来るよ」

多槻さまは割とあっさりしてるなと思った。爽やかに扉をあけて去っていった。そして魔導書をみてにやけた。魔法の基本が載ってる。楽しみすぎる。

やっぱり不謹慎なんだけど魔法ってものに物凄く興味がある。魔法とか使って変身したり戦ったり。

マスコットキャラいたらなーとか思っちゃった。ぺらぺらとページをめくって読んでみる。

なんとなく。なんとなく学校で少し習ったプログラムに近いと思った。

でもプログラムも0からソフト作るもんね。同じようなものなのかもしれない。

人間は土地を大切に豊かにしなければならない。神はそのエネルギーを受け取って大気などの自然を与えてくれる。神と人間は共存している。

神と人間は元々同じ存在だった。力のないものが人間に、力の強いものが神に。そう別れて暮らすようになった。

神と人は相容れないので弱い人間に豊かな土地を与えた。自分達は人間が住めない様な土地で暮らすようになった。

神は人間を陰ながら支えた。人間はそれで生きた。神と人間は支え合わないと存在出来ないように真なる神が世界を整えた。

創世神は人間のために豊かな土地や豊かな水を定期的に与えるようにした。

向こうの国の神話が書いてある。

魔法の基礎というより色んなことの入門書なんだなぁと読み進めた。

しかし神と人間が元々同じなのは面白いなと思った。人間と神が同じような姿してるのはずっと不思議だったけど同じような存在なら姿形でも不思議じゃないよね。

魔法の基礎は無いものを作り出すのはとても難しいのが分かった。

形を変えたりする方が簡単。

プログラムや数式みたいな呪文を口の中で繰り返す。

うん、基礎だから出来そう。

ページをぺらぺらめくると魔法らしい魔法陣も出てくる。楽しい。

「これって普通に唱えたり書いたら出来るの?」

お義兄さんに聞いてみた。わくわくがとまらない。

「君達にはリミッターがついてるから今のままでは使えないよ。下手に使えたら追っ手に見つかるかもしれないからね」

なーんだ。家に帰ってやってみたかったのに。少し残念だった。

「じゃあ覚えたってどうやって調べるの?」

「まずはペーパーテスト。それが出来たら一部リミッター解除出来るペンダントを渡すよ」

さすが先生。ペーパーテストからですか。うー、じれったいよー。

「父さん、全部覚えてからペーパーテスト?」

じっくり魔導書を読んでたたーくんが口を開いた。

「半分くらい出来たらだね。魔法が正しいか確認するのが難しいけど、こっちの世界で魔法を使える人間は少ないんだ。私も制限されてる。向こうの世界では許されてるけれど、魔法のないこの世界で使うのは。暮らしていく上でリスキーだからだ」

お義兄さんは私の事真っ直ぐ見ながら言った。

私は目を逸らしてしまった。リスキーな事。どうしても私が魔法でうきうきしてる事を見透かされてる気がするから。悪いことじゃないのに。なんだか苦しくなった。

「じゃあ私家で勉強しますね。またお願いします」

お義兄さんが何か言いかけたけど、振り切って飛び出した。そして本を両手で抱えて家に向かう。

新しい世界が広がった。魔法少女りんなのはじまり。どうしても浮き足だってしまう。そういう年頃なの!

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