第8話
「さて。話がずれちゃったから、元に戻すね。りんな。君は本当に魔法を学ぶんだね?高弘くん、君も」
真っ直ぐ私を見て多槻さまが言った。私はこくりと頷いた。たーくんも目の端で頷いてるのがみえる。
「分かると思うけどこの国と向こうの国は世界が違う。だから文字体系も違う。それも勉強できるかい?」
少し意地悪そうに微笑みながら多槻さまは言った。英語も大変なのにこれ以上???
「何か方法はあるんでしょう?多槻さまが僕達と会話できてるんだし」
焦ってる私と違ってたーくんは真っ直ぐ多槻さまを見ながら言った。そっか。そうだよね。多槻さまがこっちの言葉すらすら話せるのおかしいもの。
「ごめん、ごめん。ちょっとからかったんだ。こういう時魔法かけるか魔法具でなんとかなるんだ。魔法をかけるのはリスクがないとは言いきれないから……」
多槻さまはくっくっと笑いながらポケットからブレスレット?みたいなものを出しながら話した。
「ブレスレット?」
「そう。でもアクセサリーだとまだ義務教育の君達にはいつもつけられないよね。腕時計がいいかな?」
多槻さまは空中を切るような動作をした。そうするとカードを持っていた。そのカードをブレスレットの上に触れるようにして。呪文を唱えた。
物凄く普通の腕時計になった。魔法……。手品みたい。
「まずこの本をみて」
多槻さまはまた空気を切る様な動作をすると机の上にいかにもな本が出てきた。私とたーくんの分なんだろう。2冊。
手にとって見てみる。何を書いてるのか全く分からない。なんだかわくわくした。わからないけど魔法陣とかイラストはわかる。本当に魔法の世界。
「読めないだろ?この時計をつけてからまた見てみて」
華奢な時計を腕につけて。本を開いてみた。
読める。文字が変わった訳では無いのに。目から入った情報を脳が理解できる。
「どうなってるんだ?」
たーくんも同じように驚いてた。お義兄さんはずっと私達を眺めていた。
「それがある限り向こうとのコミュニケーションはとれる。ある程度魔法が使えるようになったらその魔法具がなくても分かるようになる」
わくわくした。でも残念なのは魔法具っていってもどう見ても普通の時計にしか見えないこと。いかにもってデザインが良かったなぁ。なんか変身とかして魔法読めるとか楽しそうなのに。
「魔法を勉強するという事は。これからトティランカからの刺客が来るかもしれない。こっちの世界に逃がしたって事はバレてはいないとは思うんだけど」
不思議なことがどんどん続いてるから忘れてたけど、私は命を狙われてたんだ。だからこっちの世界に居るんだ。でも。でも!
こんなわくわくすること逃してたまるか!
「頑張ります!」
たーくんをみたら目を瞑って何か考えてるようだった。私はそれを見て元気に多槻さまに返事をした。
「うん」
多槻さまはにっこりと笑った。それが嬉しかった。
たーくんはゆっくりと目を開けて多槻さまに誓うように言った。
「僕も魔法を覚えてりんなを守ります」
え?たーくんはそんな事を考えてくれてたの?魔法にうきうきした訳じゃないの?
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