第5話

「りんなちゃん、高弘。君達は魔法や神を信じるかい?」

物凄く真顔だった。内容が内容なだけに馬鹿にされたのかと思うけどお義兄さんの目は真剣だった。

たーくんは敢えて口を挟まないみたいだった。だから私が口に出した。

「もう子供じゃないから信じてません。神様とかは宗教とかでしょ?何か私新興宗教とか……」

話し出して慌ててしまった。もしかして私は何らかの新興宗教の関係の子供なのか?そう思い出すと余計に頭がくらくらしてきた。

「違う。怒らず聞いて欲しい。高弘、お前もだ」

お義兄さんはまっすぐ私を見ていた。なんだか怖くなった。そしてたーくんも?

お姉ちゃんは座り直して私とたーくんを見たあとお義兄さんをじっと見た。

「まだ早いと思うけど……。いい機会なのね」

お姉ちゃんも知っていた?混乱しかない。

「貴方は捨てられたのじゃないの。守るためにこちらの世界に連れてこられたの」

耳を疑った。こちらの世界に連れてこられた?私は外国から来たの?守るため?

「あの……」

お義兄さんは手で私の話を遮り最後まで聞いて欲しいと言った。

上手く納得できないけどたーくんもじっと聞いてたので座り直して聞くことにした。

「その世界には魔法がある。そしてその魔力が強くて次の王になる為に天から選ばれた。選ばれたから殺されそうになったんだ」

……。

「今どきそんな子供騙しな話……」

拍子抜けした。あんまりにも馬鹿馬鹿しい。魔法?次の王?なんの漫画の話?

力が抜けてソファに背中をどんと当てる。

でも。そんな素振りをしてもたーくんもお姉ちゃんもお義兄さんも真顔で座ってた。こんなおかしな話のなかで。

「信じられないかもしれない。1度来て欲しい所があるんだ」

お義兄さんはすくっと立ち上がった。2人もそれに倣うように立ち上がった。

私はその雰囲気に呑まれて。立ち上がってしまった。家を出て、庭にある小屋に入るように言われた。

ここはお義兄さんの秘密基地と言われてたーくんも入らせて貰えないと言ってた場所。

秘密基地に何があるの?魔法とかお義兄さんは変な新興宗教に騙されてるの?それなら止めないと。

私はそんな事しか考えてなかった。だってあまりにも現実離れしてる。魔法?王?確かに小さい頃魔法使いに憧れた。なんでも叶う魔法使い。

小屋の中はさっぱりしていた。ただ重厚な、中世ヨーロッパ等にありそうな重厚な扉があった。

「あけてごらん」

その扉は重かった。たーくんも取っ手に手をかけて開けるのを手伝ってくれた。

「俺ここに入ったことあった。開けてみたかったんだ」

ギギギと軋む音がしながら開いた。そこには綺麗な青空と一面の原っぱがひろがってた。

思わず後ろを見る。ここはお姉ちゃんの家の庭の小屋。こんな広い場所に繋がってるなんて。

百聞は一見にしかず。この諺通りなんだろう。この先は違う世界だ。空気が、香りが違う。

懐かしい気持ちがした。なんだろう。この気持ちは。この先に足を進めたい。でも怖い。このまま進んだら。二度と戻れなくなる気がするから。

後ろにいるお姉ちゃんとお義兄さんをみた。こくりと頷く。

それは好きにしていいという意味にみえた。恐る恐る足を踏み入れようとした。もう引き返せないこの世界へ。

その時。物凄い風が扉から入り込んできた。私を押し戻す勢いで。そしてそのまま座り込んでしまった。

そして。龍を連れた男の子が現れた。

「間に合った」

その男の子はそう言った。

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