魔法少女・大吉ガール

夢月みつき

第1話「大吉フォーチュン・ガール」

 ここは、中吉町にあるおみくじ神社。1月1日の元日で初もうでに来た人達でごった返していた。

 

 行列に並び拝殿はいでんで手を合わせる人々。終わってからお守りや干支の根付、破魔矢など。購入する人、お焚き上げをする人それぞれだ。

 黒髪セミロングの巫女が参拝に来た人々にお守りを売っている。



 この神社の娘、名を破魔はまさくという16になる少女でこの日は特に忙しく。奮闘していた。

(もう!お父さんったら。こんなに忙しい時に何をしているのかしら!)

 

 咲夜はそう思った、が。次々と参拝に人が来るので。

 それが顔に出ないように、「ありがとうございます。干支の土鈴ですね」

 とにこやかに対応していた。他のバイトの巫女さん達もあくせく応対している。


 その時、参拝者達が叫んだ。

「うわ~! おみくじが噛みついて来たあー!!!」

「きゃあ~、痛いっ! おみくじが!!」

「何じゃ、このみくじは~!!!」

 次々と、紙で出来たおみくじ達が尖った牙で噛みつき、人々を襲っている。



「大変!みんなを助けなきゃ」咲夜は慌てて、神社の建物の物陰に隠れた。

 すると、その瞬間に咲夜の肩の上に不思議な妖精、ミクジーが現れた。

「咲夜ちゃん! あいつらは、大凶将軍の手下の凶凶モンスターよ!

 いつものようにメタモルフォーゼするわよ!!」


「うんっ! いくよ。ミクジー!!」

 ミクジ―は赤い宝石に変わり、スマホに吸い込まれた。

 咲夜はキラキラ光るスマホを取り出すと、上にかかげて叫んだ。

「大吉フォーチュン・ガールに、メタモルフォーゼ!!!」



大吉フォーチュン・ガール・イメージAIイラスト

https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16817330667612748976



 咲夜が光に包まれ変身を始めた。

 おへそが出るほどお腹の部分が短くなり、ばかまはミニスカートのように短い、巫女服風コスチュームに変化して、

 

 最後に髪の左右には、金色の大きな鈴が付いた赤いりぼんが現れた。

 そして両手首には、鈴が付いたブレスレットと左手には、鈴がたくさん付いた神楽かぐらすずが現れた。

 光に包まれていた咲夜は、一瞬にして魔法少女に変身した。




 変身した咲夜は、さっそうと攻撃されている人達を守り、凶凶モンスターの前に立ちふさがった。

『キョ、キョ―!お前は、フォーチュン・ガール!』凶凶モンスターが叫ぶ。

「初もうでに来た人達を襲った罪。たとえ、神様が許しても

 この大吉・フォーチュン・ガールが許さないわ!さあ、清めの時間よっ。」

 フォーチュン・ガールは、華麗にポーズを決めた。




 すると、黒い光の塊が飛んできて着地したかと思うと、光が弾け飛び突如トラのマスクをかぶり、黒光りした鎧を装備したガタイの良い男が現れた。

「俺の永遠の宿敵、大吉・フォーチュン・ガール!! 

 この悪のカリスマ、大凶将軍がキサマを大凶地獄に叩き堕としてくれるわ。ガハハハッ!!!」


「出たわね。悪の権化大凶将軍!! 今日こそは、許さないんだから!」

 おみくじ神社で、大吉・フォーチュン・ガール対大凶将軍の戦いが始まった。

「今のうちに逃げるのよ。みんな!」

 フォーチュン・ガールに言われた人達は、一斉に逃げ出した。




 フォーチュン・ガールは、清めの神楽鈴を鳴らして必殺技を放った。

「大吉、フォーチュン・シャワー!!!」

 神楽鈴から光のおみくじ吹雪が放たれ、凶凶モンスター達は粉々に砕け散った。

 大凶将軍にも直撃する。

「ぐわーっ!」

「ぐうっ…おのれ。」

 片膝をつき、フォーチュン・ガールを睨む。しゅうしゅうと身体から煙があがっている。



「おのれ! 大吉・フォーチュン・ガール!! 集まれ、モンスターども。

 フォーチュン・ガールを倒すのだ!!」

『キョウ!キョ―!!』無数の凶凶モンスター達は、集まり合体すると、

 凶悪なモンスター、大凶凶に変化した。

 モンスターが地響きをたてながらフォーチュン・ガールを攻撃してきた。



 その刹那、破魔の矢が飛んできて大凶凶モンスターに突き刺さった。

 破魔の矢の力でモンスターは、痺れて動けなくなる。

「キサマは誰だっ!!」

 大凶将軍が悔しそうに叫ぶ。

 いつの間にか、1人の少年が立っていた。

 神主のような着物を着て、白いアイマスクをした茶髪のヒーローが、フォーチュン・ガールを救ったのだ。



「私は、神社を愛し神に愛された男。破魔矢・ロビン・ザ・ボーイ。

 大吉・フォーチュン・ガール! 今のうちに、大凶凶モンスターを倒すんだ!」



「分かったわ!」フォーチュン・ガールは、再び必殺技を放った。

 それは、先ほどよりも強力な技だった。

「はああ~っ!」

 フォーチュン・ガールは両腕に大吉パワーを溜め、光の弓を構え光の矢を放った。

「大吉フォーチュン・ライト・アロー!!!」



「ダイキョ―。バンザイ!」

 大凶凶モンスターは、光の粒子になってキラキラ光りながら消えていった。

「やったな! フォーチュン・ガール」

 とロビン・ザ・ボーイは、ガッツポーズをしてみせた。

 フォーチュン・ガールとロビン・ザ・ボーイが、ジリジリと大凶将軍を追い詰める。



「もう、逃げられないわよ! 覚悟はいい?」

「大凶将軍覚悟しろ!」



「おのれ!おのれ!フォーチュン・ガールにロビン・ザ・ボーイ!!

 今日の所は、引いてやる。この次は必ず倒してやるぞお!!!」

 大凶将軍は軽々飛び上がると、空中で消えた。



「ふうっ! ひとまず一件落着っ。」

「ありがとう。ロビン・ザ・ボーイ。助かったわ。」

 フォーチュン・ガールがお礼を言うと、

 ロビン・ザ・ボーイはすっと、ひざまずきフォーチュン・ガールの手を取ると。

 手の甲にチュッと音を立ててキスをした。

「礼にはおよばないさレディ。私は当然のことをしたまで。貴女が無事で良かった。」

 にこっと紳士的に微笑んだ。



「はわわ…」と耳まで真っ赤になって、言葉にならない声を出すフォーチュン・ガール。

「それではまた、会おう!」

 破魔矢・ロビン・ザ・ボーイは、すくっと立ち上がるとたたっと駆け出して途中でフッと消えた。

「ああ~っ!ロビン様っ。素敵~」


 ぽ~っと頬を染めて、ロビン・ザ・ボーイが消えていった方をずっと、

 見ているフォーチュン・ガール。そのうち、変身解除時間が来て元の咲夜の姿に戻っていた。

「もう、イケメンに弱いんだから! 咲夜ちゃんは」とミクジ―は、呆れて見ている。



 その時、ふいに後ろから声を掛けられた。

「咲夜!」

 その瞬間、ミクジ―はパッと姿を消した。

「咲夜、初もうでに来ているはずの人達が1人もいないが。何かあったのか?」

 咲夜が振り向くと、父の破魔はま三郎さぶろうが立っていた。

 見ると、三郎太はあちこちケガをしている。



「お父さん、そのケガどうしたのっ!?」

 咲夜が驚いて気遣うと。

「ああ、酔っ払いに絡まれちゃったんだ。酷くやられてしまって。」と苦笑いした。

「じゃ、家に戻ろ! 手当てしたいし。」

 と咲夜と三郎太は、家に戻ろうとすると。



「―――よっ。咲夜!」と声を掛けられまた、振り向くと。

 幼なじみのすめりょうが、階段を登り切り、咲夜に挨拶した。

「ああ、良矢。」



 良矢は、ケガをしている三郎太の姿を見て心配をした。

「おじさん! そのケガはどうしたんですか!?」

 三郎太は、良矢に酔っ払いに絡まれたことを話した。

「オレ…初もうでに来たんだけど。おじさんを早く、手当てした方が良いな。

 もし、病院に行くならオレ、今日は帰るけど?」



「そうだね。確かに病院行った方が安心かも。ありがとう! 良矢。また、来てね。」

「すまないなあ、良矢君。ありがとう。咲夜頼むよ。」

 三郎太はすまなそうに頭を下げた。

 咲夜は良矢を見送ると、父を病院に連れて行った。



 その一週間後。また、凶凶モンスターを引き連れて大凶将軍が現れた。

 ふと、なぜか父と同じ所にケガをしている将軍に気がついた。

 フォーチュン・ガールは、恐る恐る聞いてみる。

「ねえ、将軍。そのケガどうしたの?」

「キサマには関係ないっ!かかれ。凶凶モンスター達!!!」

 大凶将軍は、怒り凶凶モンスターを放った。


「せっかく人が心配してるのにー!」

 途中からロビン・ザ・ボーイも加わり、戦いは続いた。


 戦いが終わった後、三郎太はさらに酷いケガをして帰って来た。

 心配して聞くとまた、酔っ払いに絡まれたという。



 ―――月日が経ち……



 咲夜は三郎太が、大凶将軍という衝撃の事実を知る。

 三郎太は妻、真冬が大凶魔王悪グロスにさらわれたため。

 救い出すために手下になって、救出する機会を狙っていたのだ。

 真冬は、咲夜が幼い頃に亡くなったと父に聞かされて育ったが。魔王にさらわれていた。



 父は、これまでの事を娘に号泣して詫びた。

 咲夜達に負けた後、ボスの悪グロスに暴力を振るわれるという。

 それを聞いた咲夜は、怒りに震え三郎太に協力して、母を救うために魔王と戦うことになる。

 破魔矢・ロビン・ザ・ボーイも加わり、母を救い世界を救う最後の戦いへと

 おもむいてゆくのだ。



 ―――戦え、魔法少女大吉・フォーチュン・ガール!負けるな。破魔矢・ロビン・ザ・ボーイ!そして、大凶将軍!世界の命運は君達に託された!





(終わり)


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 最後までお読み頂いてありがとうございます。

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