Introduction 初めてお目にかかりやがります、お嬢様
人
見覚えのない人物がいかにも『いて当然』みたいな顔をしてそこに
「お帰りなさいませ、お嬢様」
その事実を認めた
それだけカレンが全身で
サラリと
そんな美しい
だがこの流れでカレンが『ああ、執事』などと
【
なぜならカレンは『人嫌いをこじらせすぎて自前の口で
──見覚えのある使用人でも予告なく顔を合わせたらビックリするっていうのに! 確実に見覚えがない人間が
『どうなってるのよフォルカっ!!』と内心半泣き状態で腹心のメイド長の名を
「わたくし、クォード・ザラステアと申します。本日付でお嬢様の執事となりました」
だがクォードと名乗る執事は首のわずかな動きでサラリとカレンの必殺
【雇った覚えはないっ!!】
ドレスの後ろ裾に刻まれた転送魔法円から新たなクッションを
──体格から見て分かってたけど、こいつ明らかに『執事』なんて
生家が少々
そのことをわずかな
──少なくとも私の心の
カレンはドレスに仕込まれた転送魔法円に魔力を注いで新しいクッションを召喚した。そのクッションを
【執事の】
【押し売りは】
【間に合っているので】
【お引き取りくださいっ!】
【てか】
【さっさと引き取れ】
【この不法
「不法侵入者などではございませんよ」
だが敵はカレンの予想以上に
クッションを避ける過程で
──この距離で読めって、横暴が過ぎるのでは?
とは思いつつも、このままクッションを投げつけていても
そう考え直したカレンがひとまず手を止めて目をすがめてみると、それは労働
「わたくしは
確かにその契約書の末筆には見慣れた
『伯母』と言えばとても身近な存在に聞こえるが、カレンの伯母はこの魔法国家アルマリエ
──いや、でも、いくら伯母様の下命で派遣されてきたんだとしても、いらないものはいらないし、間に合っているものは間に合っているっ!
確かに逆らう余地がないのは事実だが、いくらなんでも
というよりも、カレンが『人嫌い・人見知り・引きこもり』をこじらせていることを誰よりも承知しているはずである伯母が、カレンに断りもなく面識のない人間を押し付けてくるとは何事か。やはり一度説明してもらわなければ納得できるものもできない。
──いや、納得は絶対にしないけどもっ!
【執事は間に合っていますから】
決意を新たにしたカレンは、新しいクッションを召喚すると、そこに浮かぶ文字がよく見えるように執事に向かって差し出した。
【この離宮は人手が足りていますので、どうぞ伯母様の下に】
「つーか、テメェに
行ってください、と続けようとした文字列は、何やら
「そもそも誰のせいで俺がこんな労働者階級に身を落とされたと思ってやがんだ、テメェはよぉ」
パチクリと目を
『人
つまり、この玄関ホールにはカレンと目の前の執事しかいない。『常に
──……えぇ?
消去法で考えると、今喋ったのは目の前で優雅に微笑んでいる押しかけ執事しかいない。この優雅な
「俺の人生を文字通り
──……? なんかこの声、聞いたことがあるような……
カレンはもう一度シパシパと目を瞬かせる。ここまで
「この
そんなカレンの視線に何を思ったのか、執事は今まで
「まさかテメェ、あんなことしといて俺の顔を見忘れたとかぬかすんじゃねぇだろうな?」
その黒さで、デジャヴの元を思い出した。
「……っ!?」
ゾワリと
だがそれよりも執事が
新参者の従者を名乗るよりも
「俺の身元保証人はあのクソ女皇で、俺がお前に仕えるのは女皇の名の
【何が悲しくて魔法議会で死罪が決定された秘密結社の幹部を執事兼教育係なんかにしなきゃいけないのよっ!?】
これ以上やり合うと周囲に損害を出すと判断したカレンは、クォードを
──なんでこんなことになってるのよぉっ!?
内心は半泣きを通り
より直接的な命の危機を感じてカレンの体はガタガタと
「さぁな? 俺にもジョコーヘーカがお考えのことは分かんねぇよ」
カレンの内心をどこまで察しているのか、クッションに走る文字を読んだ押しかけ執事はより一層嘲笑を深めた。だがメガネの奥にある
「だが俺はクソ女皇との契約により、労働対価が規定額に達するか、テメェが次期国主に確定するか、どちらかが達成された時点で
クォード・ザラステア。
魔法魔術犯罪秘密結社『
それがカレンの知る、彼の
──顔を見るのは三回目、か……
あまりにも無害な執事然とした白い微笑みと今の真っ黒魔王の嘲笑に差がありすぎて同じ顔だと気付くのに
カレンが彼と対面した場面は過去に二回。
直近では死刑判決が出た魔法議会の議場で。
そして最初に出会ったのはひと月前。
「まさかまたこうして対面するとはなぁ? 次代女皇陛下?」
そう、ひと月前。
国主教育から
「そもそもテメェが国主教育から逃げ出してさえいなけりゃ、俺があそこで
【国家転覆テロを
「テメェの無責任な行動のせいで人生メチャクチャにされちまった俺が、直々に責任もってテメェを教育し直してやるっつってんだよ。ありがたく受け入れやがれってんだ」
【いや、
「るっせぇっ! 俺の自由のために四の五の言わずにさっさと俺に仕えられろっ! 手始めにここに
【何でっ!?
「俺の雇用主はクソ
間に魔銃とクッションを
カレンが向こう十年分は
根負けしてくずおれたのはカレンの方だった。
【私は国主候補から降りるべく、日々魔法研究者として
「知るかよ」
カレンは玄関ホールに正座させられた上に額に銃口を
【いつか絶対、白紙
「女皇陛下の命令は絶対なんだろうが」
無表情のまま
──正面から押し返せないならば、今は一度引いて、
その思いを込めてカレンは
そしてその契約書を大切そうに
「それではお
……これがカレン・クリミナ・イエード・ミッドシェルジェとクォード・ザラステアの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます