第二章 推し様と思いがけない急接近!?③
「申し訳ないが、今日はこれで許してもらえないだろうか……? というか、わたしの感謝の気持ちは銀貨一枚では足りないほどなんだ。きみさえよければ、受け取ってほしい」
ううっ、困ったなぁ……。私の手持ちじゃ、おつりを
こうなったら仕方がない。
「では、ありがたくいただきます。でも、銀貨は多すぎです。だから……。もしまた次にお客さんが来られた時は、ただでおまじないをするということで、どうでしょうか?」
私のところへ来るってことは、何か
私の提案に、青年はあっさりと「きみが望むならそれで」と言って
フードから
「ありがとうございました。では、これで失礼しますね」
いい加減帰らないとマルゲに
「店じまいをしたのに、わたしのせいで申し訳なかったね。だが、きみに
心から
「悩みが晴れたようでよかったです。また、何かあった時はいらしてください」
一礼して背を向けようとすると、不意に手を
「あ、あの……?」
「店じまいということは、これから帰宅するのだろう? 送らせてもらえないだろうか?」
「……ほぇ? えぇぇぇぇっ!?」
いやいやいやっ! 結構です! 全力でご
送ってもらったりしたら、私の
「い、いいですっ! 結構です! ひとりで帰れますからっ!」
激しく首を横に振って断る私に、けれど青年も引かない。
「だが、
「いえっ! とんでもないですっ!」
問われた
お、
私の返事に、フードの下の口元がほっとしたように
「よかった……。では、行こうか」
「はい……っ!」
口が! 口が勝手にうーごーくぅ──っ!
無理ぃ──っ! このお声に
つないだ手から、全身に熱が回る心地がする。放してくださいと言いたいのに、口を開けばどきどきと
青年に手を引かれるままお店を出ると、
「ところで、どこまできみを送らせてもらったらいいだろうか?」
「あの、貴族街の──」
美声に
あっぶな──っ! ふつーに今サランレッド
「貴族街?」
青年の声がいぶかしげに低くなり、あわてて取り
「あっ、いえ! 方向がですよ、方向が!」
ううっ、どうしよう……。この人、どう見ても貴族のお坊ちゃんぽいし、家まで送ってもらったら、私が
私なんかに
「どうかしたのかい?」
「その……」
何と言えばいいかわからない。困り果て、もぞ、とつないだ手を動かすと、
「すまない。会ったばかりのお
謝罪とともに、ぱっと手を放された。
「い、いえ……っ」
ふるふるとかぶりを振り、胸の前でぎゅっと両手を
いや、きっとこれは心臓が
って、しっかりして私! 王太子であるレイシェルト様が天上の星よりも遠い
レイシェルト様は私にとって夜道を照らす
心の中でレイシェルト様への
不意に、道の向こうに黒い
「何だ、やる気か!?」
「おうっ、やってやらぁ!」
ここは、みっちゃんと待ち合わせしてた場所じゃない。近くに川だってない。頭ではわかっているのに、一度外れた
「最近、もめ事が多発しているという報告は聞いていたが、その通りだな」
視線を上げると、青年がフードをかぶっていても端整とわかる面輪を男達に向けていた。
私もヒルデンさんから、最近、
ど、どうしよう。間に入るのは
おろおろとうろたえていると。
「
力強い声と同時に、
「きみを危ない目に
フード
その背中から、目が
何なの今の魅惑のイケボ──っ! こ、
よろろ、とよろめきかけ、はたと気づく。
ごめんなさいごめんなさい、と心の中で
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