第二章 推し様と思いがけない急接近!?⑨
「とにかく、お前は今夜はもう帰るんだ。エリも何か思い
「悩み……? 何かありましたの?」
ジェイスさんの言葉に、マリエンヌ嬢が心配そうに私を見る。
「その……っ」
言い
「あの、たとえ話なんですけれど……。もし、もしもですよ? 前に立つのも
「いえ、行きますわ!」
「ですよ……えぇっ!?」
予想とは真逆の返事にすっとんきょうな声が飛び出す。マリエンヌ嬢がぐっと両の
「憧れの御方のお誘いでしょう!? そんな貴重な機会を
きっぱりと断言するマリエンヌ嬢を見て、
マリエンヌ嬢なら、レイシェルト様のお
「い、いえでもっ、誘われた相手は評判が悪い人物でですね……っ! もしそのせいで憧れの御方の評判まで下がったりしたら、絶対許せませんよねっ!?」
そうだ。レイシェルト様の名声に傷をつけるなんて、
レイシェルト様は誰がどう見ても非の打ちどころがない王太子殿下だけれど、腹違いの弟・ティアルト殿下がいらっしゃる。ミシェレーヌ
「たとえ短い間でもそんな相手と過ごすなんて、もし耳にしたらご不快でしょう?」
もし、私がマリエンヌ
やっぱり、お茶会のお誘いは断るべきだ。あの時は勢いでお受けしてしまったけれど、邪悪の娘がレイシェルト様やティアルト様とお茶会だなんて、していいはずがない。私はただ、
「わたくしは、その相手の
「マリエンヌの言う通りだ。人の噂ほど当てにならないものはないからな」
決意を固める私の耳に、
「エリが話題にしている方がどなたなのかわかりませんけれど……。わたくしはせっかくの機会なら、ちゃんと
マリエンヌ嬢が私をはげますように、にこりと
「もしかしたら、評判を知っていて、それでも
マリエンヌ嬢の言葉が矢のように心を
邪悪の娘である私とレイシェルト様とのお茶会なんて、本来ならありうるはずがない。この機会を逃せば、
「……行っても、よいのでしょうか……?」
「結局は、その方のお気持ち次第ですわ。お兄様もそう思われるでしょう?」
「その、俺は……」
何やら言いかけたジェイスさんが、
「いや、確かにそうだな。周りの目を気にして、本当に望んでいることができないなんて、
こちらを見下ろすジェイスさんのまなざしは包み込むように
「ジェイスさん……。マリエンヌ様も、相談に乗ってくださりありがとうございます!」
「きゃ──っ! エリったら可愛すぎますわ! お兄様から話を聞いていて、どんな方かとずっと気になってましたけれど……っ! こんな可愛い方だったなんて!」
「マ、マリエンヌ様!?」
抱きつかれた勢いでフードがずれそうになり、あわてて押さえる。マリエンヌ嬢を引きはがしたのはジェイスさんだ。
「おいっ!? 余計なことを口にするな! お前、もう帰れ!」
なぜか急に
「もうっ、お兄様ったら、心の
「口が軽い妹が
「もう、仕方のないお兄様ね。わかりました。ひとまず欲しいものを買ったら帰ります」
あれとこれとそれも、とマリエンヌ嬢が買い
「この花飾り、本当に素敵ですわ! わたくしもお友達にすすめてよいかしら?」
「もちろんですっ! ありがとうございます!」
レイシェルト様グッズが広まるなんて、喜び以外の何物でもない。しかもこんなに買ってくれるなんて、新しい材料を買うだけじゃなく、寄付にだって回せます!
たくさんの花飾りを買ってご
「ほんと急に悪かったな。うちの
「とんでもないです! 今日はお客さんも来てなかったですし、気にしないでください。それより、華やかでお優しくて、本当に素敵ですねっ、マリエンヌ様は! さすがジェイスさんの妹さんですっ!」
ぶんぶんとかぶりを
「ジェ、ジェイスさんっ!? ちょっ! フードがずれ──」
「やめないか。嫌がっているだろう?」
あわててフードを押さえると同時に、
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