第二章 推し様と思いがけない急接近!?⑧
「推し様の言葉につい
「おい、百面相してるけど、大丈夫か? 何か
悩んでいたのはティアルト様のお茶会についてだ。舞踏会から日が
理性は断るべきだと言っている。けれど、レイシェルト様やティアルト様の笑顔を思い浮かべると、どうしても断りの手紙を書く手が止まって……。ぐるぐると思考が同じところを
でも、フードとヴェールがあるから、鼻から下くらいしか見えないはずなのに、どうしてジェイスさんは私の表情がわかったんだろう?
不思議に思っている間に、テーブルの対面の空いている
「どうした? 悩みがあるんなら聞くぞ?」
きっとこういう
「ジェイスさんったら。悩みを聞くのは私の仕事ですよ! 仕事を取られちゃ困ります」
マルゲ以外に心配されたのが
ヒルデンさんもお客さんもみんないい人で、推し活の資金
私の言葉にくすりと笑みを
「大丈夫っていう
「い、いえっ、さっきのは……」
「そ、それよりジェイスさんこそどうしたんですか? 今日はいつもより顔を出してくれるのが
「私でよければ聞きますよ? お役に立てるかどうかはわかりませんけれど……」
ジェイスさんからは黒い
「もちろんタダでいいですからね! ジェイスさんにはお世話になってますし……」
警備隊の
「もし
ジェイスさんがふいと顔を
「俺が顔を見せる時間はたいてい客でにぎわってるだろ? 今日はたまたま
「店じまいが近いこの時間は、いつもお客さんが少ないからこんな感じですよ? そういえば、今日はいつもより遅い時間に来られましたけど……。何か、あったんですか?」
「いやその、最近、
ジェイスさんが言葉を
「おいっ!? マリエンヌ!? お前……っ!」
ジェイスさんの声に、私も扉を振り向く。そこには、侍女らしき女性と青年従者の二人を従えたマリエンヌ
「ばれてしまいましたわ。お兄様をこっそり観察して、
マリエンヌ嬢が残念そうにこぼす。六日前の舞踏会と異なり、地味な色合いの服を着ているが、
「いったい何しに来た!? こんな時間に!?」
ジェイスさんが血相を変えてマリエンヌ嬢に
マリエンヌ嬢はエリシアのことを知っている。まさか、邪悪の娘が町人街でまじない師をしているなんて夢にも思わないだろうけれど……。フードとヴェールで顔を隠しているとはいえ、背中に冷や
ジェイスさんの
「だって、お兄様ったらレイシェルト
ちらりと私を見たマリエンヌ嬢に華やかな
もしかしたらと思っていたけど、マリエンヌ嬢もレイシェルト様推し……っ!? 私の地道な推し活が、ついに実を結んだ……っ!?
「だからと言って、
ジェイスさんの声にはっと
「あ、あの……」
ジェイスさん達に歩み寄り、おずおずと後ろから声をかけると、いち早くマリエンヌ嬢が反応した。
「あなたがまじない師のエリね!? わたくし、ジェイスお兄様の妹のマリエンヌと申します。このたびは素敵な花飾りを作ってくださって感謝しますわっ!」
「い、いえっ。こちらこそ、お買い上げいただきありがとうございます……っ!」
マリエンヌ嬢も確実にレイシェルト様を推してらっしゃるのか、確かめたい……っ! けど、どうやって話しかけたらいいんだろう……?
私の
「わたくし、こんな品が欲しいと思ってましたの! レイシェルト殿下の
「っ!? で、ではマリエンヌ様もレイシェルト殿下を推し……いえあの、
思わず食いつくように
「そうですわ! もしかしてあなたも!? レイシェルト殿下は本当に格好よくて素敵ですわよね……っ!」
「は、はいっ! レイシェルト殿下は
「私、憧れの気持ちを少しでもあらわしたくてリリシスの花の
「まあっ、あなたったらけなげで
「嬉しいですっ! 私などでよろしければ……っ!」
きゃ──っ! 地道に
「おいっ、マリエンヌ! ちょっと待て!」
ヴェール
「会ったばかりだっていうのに、急にそんな……っ! 俺だってここまで親しくなるのに、二年もかかったってのに……」
何やらぶつぶつ
「あら。親しくなるのに時間は関係ないでしょう? それに、わたくしがエリとお友達になったとしても、お兄様に悪いことなんてないと思うのですけれど?」
「いやっ、それは……っ!?」
何やら
あっ、そうか……。マリエンヌ嬢は
それに私だって、せっかくできた推し友に
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