吹雪の中へ

天身は助手席のドアを開け、勢い良く外に出た。



ズボッ!!



スノーシューズを履いた左足は、踏み出した瞬間に膝まで雪に埋まった。

ドアを掴む手が、強風に引っ張られる。

力を込め、離さない。


全身を車外に出し、ドアを閉める。

冷気が天身を包み込んだ。


厚い雲に覆われた空間は、夜のように黒い闇。

車の左ライトに当てられた雪が、白く光っている。


右、左、と足を上げ、車の前側への移動をする。

雪上の歩き方に慣れている天身でも、1歩ごとに膝まで雪に埋もれてしまい、速い動きができない。


顔面は皮膚が露出している。

最初に感じていた冷たさは、すぐに麻痺して無になった。

車の前方に回り込んだ時には、触感も失われていた。


車の前面は露出している。

車体の右前部が雪に埋もれていた。

タイヤがどうなっているかはわからなかった。


運転席の雅代の顔が見えない。

合図の叫びをしても聞こえるはずがないと判断し、ボンネットを軽く叩いてから、車を押した。

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