雅代の操作は車、タイヤに伝わっている。

しかし、その意志の通りにはならない。

何度もバックを指示するが、車は動かない。



「あのぉ、申し訳ないですが、前に出て押してもらえますか?」



雅代は、天身に頼んだ。

この強風、吹雪の中、それをやれと言うのは酷い。

けれど、今、この状況での最善は...。



。o(あ~...無駄だろそれ)



天身は拒否したい気持ちになった。

とはいえ、この状況では断るのもどうか。

できる努力はした方が良い。



たとえ


その結果


自分が死んだとしても。



ドアの外には未体験の世界が待っている。

すぐ近くに死が感じられるような...。



。o(雅代、いいのか?)



言葉にはしなかった。

天身は、自分の中にある死への希求が、ついに果たされるのではないかと感じた。

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