1秒
自車のボンネットすら見えないその状況は、1秒続いた。
再び前方が見えるようになった時...
「道は!?」
と、雅代は言葉に出した。
カーブの多い峠道だ。
視界が閉ざされた間は直進するしかなく、左右どちらかに寄ってしまっている可能性が高い。
運悪く、道の端から転落しようものなら、2人揃って人生が終わる。
「左方向にややカーブ。」
この状況下、天身は異常な程に冷静だった。
元々スピードを落としていたのが幸いし、進行方向の修正は容易に行えた。
「1秒見えないだけでヤバいね。」
雅代は事態の深刻さを理解している。
「悠也さん、今みたいに、道を見失わないように教えてください。」
自信満々だった雅代が、この状況を受けて、天身に頼んできた。
「OK。」
天身は短く言葉を返した。
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