12/6

 その通りなのである、異世界では子供の欲しがりそうなものが売られていない。

 あかりの父さんは膝に光を座らせてよしよししながら提案してきた。

「絵本はどうだ? 寝るときとかに読み聞かせすればいいってね?」


「絵本……かあ。どこで手に入るスか」


「うーん……ブックオフ……は、もうやってねんだな。本屋はもう一軒もねっしな。ロイさ頼んで異世界の絵本取り寄へでもらえばいいんでねが」


「異世界の絵本……ですか」

 そんなものが存在するのだろうか。分からないが聞いてみるしかない。あかりの父さんが帰ったあと、電話してみると、どうも異世界には子供に読ませる本というのは基本的に存在しないらしい。


「書物は貴重ですからね、子供に与えることはないんですよ」

 どん詰まりであった。


 やはり作ってしまおうホトトギスするしかないらしい。しかしなにを? 魔動タイプライターなどはぜんぶ魔王に返してしまったし、本を作る大変さはたっぷり体験したのでとりあえずノーサンキューである。


 だいいち本人たちが楽しくなければ意味がないのだ。暗礁から動けないでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る