第4話 楽しかったかもな。

カップルだと思われている。

これが私にとって最悪の状況だとわかる?

私には好きな人がいるの。

なのにこの状況はダメよ。

嫌よ。


しおりは物凄い速さで食べ進めた。

無言でただただ目の前にあるメシと向き合った。


「ご馳走様。もう行くね。」


立ち上がった私を引き止めたのは、「行こうかー!」の一言だった。

そう、刻晴くんは私と同じタイミングで食べ終わったのだ。



教室に着いた。

まだ隣には刻晴くんがいる。


「ギターっていつも何時から弾いてるんだ?」


「4限の授業が終わってすぐかな。」


「そっかー!またあの教室に行けばいいのか?」


「うん。」


「了解!じゃあ俺そろそろ行くなー!」


「じゃあね。」


刻晴は手を振り、教室を出て行った。


疲れたな。

でも楽しかったかもな。


しおりは余韻に浸りながら、ゆっくりと次の授業の準備をした。



重いギターを背負い、1人いつもの場所へと向かう。

もう刻晴は来ているのか。

そんな事を考えている自分がいて、一気に私は家に帰りたくなった。

今日はいつもの場所に行かないでおこうか。

なんて考えていたら、後ろからあの声がした。

そう、刻晴の声だ。

これがもし千沙羅くんならどれだけ良かったかと考えてしまう自分のことを気持ち悪いと思う。

でも仕方がない。

だって好きなんだもん。


「やっぱりギター背負ってる人ってかっこいいよなー!」


また目を輝かせている。

そんな目で私を見ないでくれ。


ガラガラガラ


いつもの教室に入る。

やはり誰もいない。

この教室は1番上の階にあり、授業終わりにわざわざこんな所まで来る人なんていないのだ。

来る人はいないはずなのに何で刻晴はいたのか不思議に思うのは作者だけだろうか。


「チューニングするから待ってて。」


「了解!」


今日もこの教室は音で溢れていた。

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