♯34.5 白河さんの涙 ※白河さん視点
「ったく、あのバカ息子が」
かなり心細いし、寂しい。
さっきまでは上手にお話で来てたと思うけどこれからどうしよう……。
うちの親が来るのにはもう少し時間がかかる。
「
「そんなことはないです! お仕事頑張っているのは素敵だと思います!」
本心からの言葉だ。
お仕事を頑張っている
私はそんな
「
「え?」
いつの間にか私の頬には涙が伝わっていた。
「あ、あれ? おかしいな……」
さっきは我慢できたのに、そう指摘されると涙が止まらなくなってしまった。
「あの……私、
私も一緒に働いていたからよく分かる。
だからそんなことが悲しいんじゃない。
置いて行かれたのが悲しいんじゃない。
「うぐっ……えぐっ」
「
今日は、
でも、これでは大失敗だ。
わけの分からないことで泣いてしまっている。
「あいつ、一生懸命になると周りが見えなくなるでしょう。昔からそうなんだ」
そんなことない!
ずっと優しくしてくれている。
でも――。
「
「うぐっ……」
その言葉を聞いて、また涙が溢れ出してしまつた。
大和さんは優しくて、いつも格好良くて……。
だから大好きで。
付き合ってからもっと好きになって。
昨日、
でも、ちょっとだけ違う意味もあった。
「ぐすっ……うぐっ……!」
大好きな人が一生懸命やっていることのそばにいられないのが悔しい。
大好きな人が真剣にやっていることのそばにいられないのが悲しい。
去年は……!
ついこの前までは私も一緒に仕事をしていたのに!
丑の日も、お盆も、年末も!
私がずっと値下げをしていたのに!
「うわぁあああああん!」
ついには声を抑えられなくなってしまった。
みっともないし、情けない。
――私は
※※※
「あらあら、そんなことでうちの子は泣いてたんですか」
「すみません、うちの馬鹿息子が大切なお嬢様にご迷惑をおかけして……」
最悪だ。
泣いているタイミングでうちの親がやってきてしまった。
これでは私が
「
「や、やややめてください!」
さっきまではニコニコしていた
「あのね、
「ぜ、全然そんなことないですから!」
あーあー……。
今はうちのお父さんとお母さんもいるのにそんな話をされちゃってる。
私が勝手に泣いただけなのに、これじゃ
「そんなことないですよ、
「お願いだからそのことは言わないで!」
恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
その話は
「水野さん、本当にすみません。この通り、賑やかな母と子でして。一人娘だったので大分甘やかしてしまいました」
うちのお父さんの一言で場がぴしっと引き締まった。
「
「全然! 全然そんなことないですから!」
うぅ、今日は本当に大失敗だ。
事前に
「とりあえずお食事でもどうでしょうか? あっ、
「できるわけないでしょう!
うちのお父さんもお父さんだった!
……私はこっそり気づいているが、実はお母さんよりもお父さんのほうが
いつぞやか、自分とちょっと似ている匂いを感じるとか言ってたし。
お父さんって魚のお刺身大好きだし。
「
「あっ、いいですね。実はこの辺のことはまだよく分かってなくて」
「これからお互いにこっちに来る機会があるでしょうから。美味しいお店を沢山開拓しちゃいましょう」
お父さん同士で話が進んでいってる。
うちのお父さんが初見の人とこんなに親しそうに話すのはとても珍しい光景だ。
「
「うっ……」
「やっぱり! どうせあんたのことだから
「し、仕方ないじゃん! 一緒にいればいるほどもっともっと好きになっていくんだもん!」
つい大きな声を出してしまった。
「良かったぁ~、
きょ、今日はやらかしてばっかりだ……。
私の顔は絶対に本マグロよりも赤くなっていたと思う。
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