♯29 恋人としての白河さん②
「最近、お忙しいですか?」
ゴールデンウィークも折り返しにかかろうとしていた日の朝の六時。
今日もいつも通り
朝ごはんを取る習慣はなかったのだが、いつの間に
「うーん、そこそこかなぁ」
「そこそこですか」
「六時半出社で十分間に合うからね」
忙しいといえば忙しいが、思ったほどではなかったというのが本音だ。
ゴールデンウィークが始まったばかりの頃は、早朝五時に出社にしていたのだが思ったよりも作業が余裕だった。
優秀な部門員さんと応援にきてくれる人たちのおかげだと思う。
「明日はお休み取れるんですよね?」
「うん、だって明日は
「
そして、明日は俺たちの一大イベントが控えていた。
そして、
「……」
「
「あっ、すみません」
俺が声をかけると目をふせてしまった。
「どうしたの? 具合悪い?」
「……いえ、最近ちょっと寂しいなぁと思ってしまいまして。ゴールデンウィークで一人で家にいることが多いからでしょうか。」
「昨日は
「
何故か
「すみません、お仕事前にこんなことを言ってしまって。ちょっと昔のことが懐かしくなっちゃったのかもです」
あっ、そうか。
「これから
「そうなればいいなぁとは思っているけど……」
「前は私も
「でも今は前よりも一緒にいるでしょう?」
「そ、それはそうですよね……」
どこか歯切れ悪い会話が続く。
「あっ! そろそろ行かないと」
「す、すみません! 今日はちょっと不安定な日みたいで……。今日のお弁当です!」
まだ早朝なのに何度も謝られてしまった。
俺はお弁当を受け取ると同時に、
「今日はなるべく早く帰ってくるから」
「ぐすっ……。よろしくお願いします」
元は職場で出会った関係なのに、昔の話をして寂しがらせてしまったのかもしれない。
「ゴールデンウィークが終わったら仕事もちゃんと落ち着くと思うから、そのときは
「はい、楽しみにしてます」
※※※
「――ということがありまして」
今日の朝あったことを、同じ女性の
ゴールデンウィーク前はあんなに元気だったのにとても心配だ。
「まぁ、女性はそういうときありますよね」
「あるある」
……が、女性陣の反応は冷ややかだった。
プライベートのことを相談するって結構勇気がいるのにさ。
「でも新生活から一ヶ月が経つと色々考えちゃいますよね」
「考えちゃう?」
「このままでいいのかなぁとか。仕事もそうですが」
「う゛っ」
「ほら、私の同期もですがゴールデンウィークを過ぎると辞める人多いので」
「あー……」
俗に言う五月病ってやつかな。
会社だけではなく、学生にもあるとは聞いたことあるけど。
もしかしら
もしそうだとしたら絶対に俺の責任だ……。
「まぁ、
「どっちだよ!」
「大変ですね、一緒に住むとなる女性のそういうのにも向き合わないといけないんですもんね」
……。
……?
……あれ? 俺、アホだったかも。
「ダメですよ。仕事だけにかまけてないで、
「正論でぶん殴られている」
確かに最近は応援のこともあり、プライベートよりも仕事に集中していたかも……。
「あ、
「お任せください、師匠!」
みょ、妙に舎弟ムーブが板についているような気がする。
「
そんな話をしていたら、店長がいきなり鮮魚作業場に現れた。
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