♯27 応援に来るあの人たち 後編
ゴールデンウィーク二日目。
今日は、前の店で一緒に働いていた
「チーフー、それで
「特に問題なくやっております……」
「まだ学生だからね、水野チーフがしっかりしないとダメだからね」
「分かってます」
「
昨日は昨日で地獄だったが、今日は今日で地獄だ。
「えー、チーフの彼女さんって
同じくお刺身を切っていた
「そうなのっ! もうね、本当に可愛くてね~。二人の間を取り持ったのはこの私なのよ」
なんかやたら話を盛られているような気がする。
ある意味、
ちなみにその
昨日は一緒に飲みに行ったらしく、今日は二日酔いらしい。
昨日の作業スピードは見る影もなくなっている。
そういうところは二人ともそっくりである。
「やーまがみさん! おはようございます!」
「あら~、
「おかげさまでですよ!」
久しぶりに会うはずなのに、全然その時間差を感じない。
「
「えへへ、そうなんですよ。前の店ではお母さんって呼んでたんですよ」
「えー! やだー!」
取り入るのが上手いなぁ……。
前の店でそんなやり取りをしているところは見たことねーよ。
「しかし、こんなにうちに応援を出していいただいて大丈夫なんですか?」
プライベートな話題から仕事の話題に切り替えよう。
これ以上、あることないこと話されたらたまったものじゃない。
「大丈夫じゃないー? チーフがいたときに比べて暇だし」
非常に複雑な店舗事情。
俺が前にいた店は見事に前年割れの数字が続いている。
チーフとしてどんなもんだいという気持ちもあれば、新しいチーフにはもう少し頑張ってよという気持ちもある。
この前の
「というか、誰が応援に行くかで戦争が起きたわ」
「戦争?」
「
「
蘇る苦い記憶。
後半は大分改善したが、星さんは圧倒的に仕事のミスが多い人だった……。何度、値付けのラベル直しをすることになったか!
「もー、そんなこと言って。二人とも
「い、いつの間にあっちにも弟子が……」
「人徳だよね。居なくなってからそう言ってもらえるのって嬉しいでしょう?」
なんか、この人にこうやってからかわれるのは少しばかり懐かしいな。
「それでね~、
「まだ話すことがあるんですか!?」
自店ではないので力が抜けているせいだろうか。
今日の
※※※
「それでね~」
朝から夕方。出社から退勤間際までになってもぺちゃくちゃと話し続けている。
「や、
「あらら~」
疲れた。二日連続でドッと疲れた。
俺、この人たちと毎日仕事してたんだよな?
たった数ヶ月前の話なのに信じられなくなってきた。
「あっ、渡すの忘れるところだった」
そう言って、
「一つは部門の皆さんで食べてくださいな。あともう一つは
「えっ、いいんですか?」
「あっちの店はみんな
「そんな……恐れ多いですよ」
「こっちの店が嫌になったらいつでも戻ってきてね。ってみんなからの伝言」
「皆さん……」
ちょっとうるっときてしまった。
異動しても自分のことを忘れないでいてくれるって本当に嬉しい。
「私もあっちの店やめて、このままこの店に来ちゃおうかなぁ」
「それ、昨日の
「じゃあやめとく」
「あはははは」
前いた店と今の店は距離的にかなり離れている。車でも一時間半くらいかかってしまう道のりだ。
交通費は会社から出るといえど、向こうの店からわざわざ応援に来てくれたのは本当にありがたいことだと思った。
「それでね、チーフってうちの値下げをやっていた子と」
「早く帰って下さい」
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