♯39 大好きになってくれた
やばい、やばい、やばい。
実家に帰りますの破壊力やばい!
仕事に夢中になりすぎて、
思えばこの数か月間、ちゃんとデートもしてなかった
これでは愛想をつかされて当たり前だ!
とりあえず次は
「夜分遅くにすみません!
『あら~、
すぐに
「
『うん、来てるよ。電車で帰ってきたみたい』
「い、今から俺もお伺いして大丈夫ですか!? 夜遅くに大変申し訳ないのですが……」
『大丈夫だけど、どうしたの?』
「直接ご説明しますっ!」
「う、うん?」
そう言って俺は電話を切った。
高速を使えば大体一時間くらいで
仕事を頑張ったことに悔いはない。
部門のみんなとは仲良くやれているし、
もちろんリニューアル店舗を背負うことになったプレッシャーもあった。
でも、そんなプレッシャーの中でみんなと仕事をしていくのは楽しかった。
みんなと真剣に仕事をするのが楽しかった。
「んっ?」
……そんなことを思っていた自分自身にびっくりした。
……。
……。
そっか。
俺、仕事が楽しいと思ってたんだ。
好きな人と一緒にいられて、第二の家族だと思っている人たちと真剣に仕事ができる。
その毎日が楽しかったんだ。
一年前はいつやめてもいいと思ってたんだけどなぁ……。
(そんな考え方はもう古いのかもな)
「だからあのときムカムカしたのか……!」
ハンドルを握る力がつい強くなる。
その気持ちが一層強くなった。
※※※
「お邪魔します!」
「どうしたの? そんなに急いだ?」
「
「あー」
なんだかここの来るのも随分懐かしく感じる。
家に着くと、
「
「お父さんッ!」
お父さんが何かを言おうとしたが、すぐにお母さんに止められた。
お父さんがよく分かっていない顔をしている。
もちろん俺もよく分かっていない。
「
「い、いいんでしょうか……」
「もちろん」
あれ? 喧嘩をしたのかと咎められるとかと思ったのだが、あまりにもいつも通りの反応だ。
むしろかなり歓迎されている。
「そ、それで
「今、コンビニにアイス買いに行ってるよ」
「アイス!?」
「
んっ? あまりにも普段通り過ぎないか。
実家に帰るって言うからよほどのことがあったと思ったのに。
「……」
「
「その……この度は失礼があって大変申し訳ございませんでした」
俺はお二人に頭を下げた。
「い、いきなりどうしたの!?」
お母さんから焦った声が聞こえる。
お父さんはただ不思議そうに俺のことを見つめている。
「リニューアルのときも、この前うちの親がきたときも、おかいまいすることができずにすみませんでした。せっかく来ていただいたのに……」
「ぷっ」
「え?」
お母さんから笑いが漏れた。
「そんなこと気にしていたの?」
「そ、それはもちろんですよ!」
「
そう言いながらお母さんが玄関にスリッパを用意してくれた。
「ほら、玄関で立ち話もなんだから入ったら」
お父さんが優しい顔で俺にそう声をかけてくれた。
「……」
「
「あ、あの! これもいきなりで大変失礼なのは承知の上なのですが、お二人にはどうしても言っておきたいことがありまして――」
※※※
「はぁ、はぁ!」
俺は
早く
早く
走っていればそのうちすれ違うだろう。
「ぜぇ……ぜぇ……! 完全に運動不足だ……!」
早くも息が切れている。
十代の頃の感覚でいると、自分でもがっかりするほど体力が落ちている。
趣味でスポーツでもするのもいいかもなぁ。
プライベートのことにもう少し目を向けないといけないかもしれない。
「あれ?
「
そうこうしていると、エコバッグを持った
~その頃の白河家~
「お父さん泣いてるの?」
「いや……ちょっと早かったなぁと思って……」
「
「それはそうだけど……」
「あなたって
「あの真面目な
「……今どき珍しい子だよね
「そう……だな……」
「もう! ずっと泣いてるじゃん! あの子たちが帰ってきたらどうするのよ」
「……」
「私、実は
「そんなの親だから当然だろう」
「それはもちろんだけど、また違うところでもさ」
「違うところ?」
「
「……」
「でも、安心した。あんなに必死になってうちに来てくれるんだもんね。
「……お前は
「全然。あなたもそう思っているから泣いてるくせに」
「かも……な……」
「笑っちゃうよね。ただ携帯が壊れたから戻ってきただけなのに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます