♯25 GWの鮮魚部門
リニューアルオープンからもう少しで一か月が経とうとしていた。
俺と
「
「いつもありがとう」
その一つが
一回、見つけることができずに本当に悲しそうな顔をされてしまった。いや、のり弁の二段目の海苔がハートになっているのは分からねーよ。そのまま食べちゃったよ。
「
「はーい! 分かってます!」
「分かってない顔をしてる……」
お弁当騒動があって以来、
「ふんふーん♪」
「……」
かなり大変だと思っていたのに、朝お弁当を作ることを全く苦にしていない。
むしろ鼻歌を歌っちゃうくらい楽しんでいる。
「ま、毎日こんなに豪華でお金は大丈夫?」
「大丈夫ですよー! 基本は値下げのやつなんで!」
金銭面に関してもぬかりがない。
元スーパー店員の俺の彼女は、値下げ商品をしっかり買ってくるようになってしまった。
「いかに安く、いかに美味しく作るかが腕の見せ所ですからね!」
「お、おう……」
主婦スキルのアップの仕方が半端ねぇ……。
その他、家事についてもいつの間にかたどたどしさはなくなり完璧にこなすようになっていた。
「それにしても、もうすぐゴールデンウィークですね」
「俺は仕事だけどね」
「でも、
「うっ」
「失礼がないようにしないと!」
何故か今、
「緊張しちゃうなぁ」
「俺も」
「えっ、
なんだろうこの変な感覚は。
自分の親と、自分の彼女のファーストコンタクトってなんでこんなに異物混入感があるのだろうか。
「そういえば、うちの両親も遊びに来るって言ってました!」
「初耳なんだけど!?」
「今、初めて言いましたもん」
まさかこんなに本マグロともずくが会うことになってしまうとは……。
「みんなでお食事でもいけるといいですね!」
「う、うん」
うちの親には事前にでっっかい釘を刺しておこう。
変なことは言うなよって言っておかないと、絶対に大変なことになる。
「それじゃ、ごみ捨てて行くから」
「はーい、よろしくお願いします!」
玄関に置いておいたゴミ袋を抱えて、そのまま出社することにする。
「
「どうしたの?」
「忘れてますよー?」
目を瞑って、
「んっ」
お出かけ前のキスもいつの間にか約束事になっていた。
※※※
「あっ、今日もまた馬鹿やってきたって顔してますよ」
早朝の荷下ろしをしていたら、
「
「ふふんっ、昔からは勘は良いって言われるんですよ」
「エスパー
「それは芸人になりますよねっ!?」
今日も元気いっぱいの
もう完全にうちの部門のムードメーカーだ。
「弟子に対してなんたる仕打ちを……」
「
「
ビシッと
余程、師匠と弟子の関係が気に入っているらしい。
「そういえば、ゴールデンウィークって鮮魚は忙しいんですか?」
「暇」
「え?」
「暇だよ。売るやつないし」
ゴールデンウィークの鮮魚部門。
立地にもよるけど、一年を通して最も仕事量が少ない大型連休である。
ゴールデンウィークに刺身? そんなに売れません。
ゴールデンウィークに切り身? いつもと売り上げは変わりません。
メインとなるのはバーベキュー食材だが、バーベキュー食材は商品加工の手間がほとんどかからない。
そのまま売り場に出して終わりである。
「まぁ、リニューアル後だから売り場を作るためにちょっとは早朝出勤になるけどね」
「期待させて落とされた」
「帆立はかなり強気に発注したからね。
「私の練習?」
「帆立のお刺身。大丈夫だよ、簡単だから」
「おぉ~」
いまだに俺の中では青果部門のイメージ残っているけど、案外鮮魚部門も向いてそうだ。
「チーフ、チーフ。応援の日程がきたよ」
「あっ、本当ですか」
荷下ろしが終わったと同時に、
「うわー、助かる―」
暇とは言ったが、それは普通ならの話だ。
リニューアルオープン後は、売り場をしっかり作らないといけないということもあり慢性的な人手不足状態だ。
なので、こういうイベントがあるとバイヤーから各店舗にうちの店への応援要請を出してくれるのだ。
新店への興味ということで、結構積極的に応援に来てくれることが多い。
チーフになる前は、俺も何回か他の店舗に応援に行ったことがあった。
「最悪なんだけど」
「ど、どうしたんですか!?
応援に来てくれる人の日程表を見る。
日付の下には名前が書いてある。
「げっ」
すぐに
・応援者
「見なかったことにしましょうか」
「そうだね」
あ、あの親父、応援に行くようなキャラではなかっただろうが……!
どうして今になってこっちに来たがるんだ!
「わー!
「ん?」
後ろから
・応援者
どうやら前の店のツートップがうちの店に応援にくるらしい。
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